通信障害が起こるとコネクティッド・サービスが使用できない
先日、老舗キャリアであるauが大規模障害を起こしたことは記憶に新しい。障害発生から通信の回復まで62時間以上もかかるという大きな障害だった。じつはこのとき、auの通信回線を利用しているトヨタ系のコネクティッドサービス「T-Connect」はサービスが利用できないという事象が発生していたのだ。
コネクティッドサービスは常に利用できるものではなく、通信キャリアのトラブルによって使えなくなる可能性があることが露呈したといえる。もともと通信エリア外ではコネクティッドサービスが使えないというのは大前提ではあったが、ここまで脆弱性のある仕組みだとは想像していなかったのではないだろうか。
たとえば、コネクティッドサービスの機能としてスマートフォンをクルマのカギとして利用するというものがある。スマートフォンだけでクルマを運用している人は皆無だろうから大きな問題にならなかったようだが、通信障害によりコネクティッドサービスが落ちているときには、スマートフォンで解錠したり、システムを起動することもできなくなる可能性が高い。
将来的な話をすると、高レベルの自動運転においては、常にサーバと接続することが前提となっている機能もある。通信障害が起きると自動運転のクルマは動けなくなる可能性も出てくる。自動運転時代には、通信障害でつながらないという状態は認められないのだ。
対策として考えられるのは、まったく異なるキャリアを利用できるようデュアルSIMにして冗長性を確保することだろうか。
それでも大規模停電によって複数のキャリアで通信障害が起きることもあるだろう。あまり考えたくない予想だが、他国からの侵略に伴うジャミング(電波妨害)によって通信障害が起きれば、クルマはまともに走れないかもしれない。
逆にいうと、安全にクルマを走らせるためには、どんなにコネクティッド技術が進んだとしても、スタンドアロンの状態で安全に走れるだけの機能を残すように設計しておく必要がある。通信することが絶対条件となるコネクティッドカーというのは、安全性の面からするとあり得ない存在なのだ。
3日間近くに渡ったauの通信障害によって、CASE時代の課題がユーザーレベルでも理解しやすくなった。「失敗は成功の基」ということわざもあるが、今回の事象を糧にして安心・安定したコネクティッドカーの進化を期待したい。