性能は互角なのになぜ負ける? 販売台数で明暗クッキリのガチライバル車2組の理由を探った (1/2ページ)

この記事をまとめると

■軽自動車とコンパクトカーでライバル車種の売り上げを比較

■優れた機能やユーティリティをもってしても勝てない場合が多い

■中身で勝負する前にどうしてもデザインが優先されがちと言える

「よければ売れる」ほど単純ではないライバル車たちの戦い

 販売の好調な車種は、多くのユーザーが使っている優れた商品だ。劣悪な商品が宣伝によって好調に売られるほど、日本の顧客と市場は甘くない。

 しかし、売れていないから劣った商品と判断することもできない。商品力は高いのに、販売体制や宣伝のされ方などにより、売れ行きが伸び悩むことは少なくないからだ。そのような車種と好調に売られる人気のライバル車を比べたい。

■軽自動車:ダイハツ・タント vs ホンダ N-BOX

 2022年1〜6月におけるタントの届け出台数は、1カ月平均が約7400台だ。一般的には立派な売れ行きだが、ライバル車のN-BOXは、同じ時期の1カ月平均が約1万7300台に達した。N-BOXは、1カ月平均でもタントに比べて約1万台多く、比率に置き換えれば2.3倍になる。

 販売格差は大きいが、機能やデザインの水準は互角に近い。N-BOXは内外装の質感、静粛性、乗り心地で上まわる。

 その一方でタントは、後席の座り心地と走行安定性を現行型で大幅に向上させた。また、左側のピラー(柱)をスライドドアに内蔵させるから、前後のドアを両方ともに開くと、開口幅が1490mmまで広がる。ベビーカーを抱えた状態で乗り降りできるから、雨天時などには快適に使える。このようにタントがN-BOXより優れた点も多い。

 それなのに販売格差が拡大した理由は、N-BOXが前輪駆動の軽乗用車では、最大級の室内空間を備えることだ。前述のとおり内装も上質だから、購買意欲も刺激される。先代型の高人気により、乗り替え需要も豊富だ。ホンダの小型車ユーザーまで奪って、好調に売られている。

 対するタントは、標準ボディのフロントマスクが地味で、内装の質もいま一歩だ。実用性は高いが、選択の決め手に欠ける。しかもスライドドアを備えたムーヴキャンバスも堅調に売られて、需要が分散された。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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