クオリティが高くて安い中国産EVに日本危うし!?
じつは今回、非常に短い時間ではあったが、アット3に試乗することができた。アット3の運転席に座った率直な印象は、エクステリアと同様に「シンプル」。
インパネは小ぶりな液晶メーターとセンターディスプレイのみというスッキリとした構成で、センターコンソールにはシフトレバーと必要最低限の物理スイッチが配される。
インテリアはスポーツジムと音楽スタジオをイメージしているそうで、なるほどエアコンの吹き出し口はダンベル、ドアポケットはギターの弦がモチーフになっているのがわかる。
面白いかったのは、センターディスプレイを「横表示→縦表示」と回転させられるところ。縦表示にすれば、まるで巨大なスマホがインパネにあるかのような印象だった。
非常にデザイン感度の高い洗練された空間にはいっさい安っぽさはなかった。
ちなみに後席にも座ってみたが、BYD最新のEVプラットフォームのおかげもあってか、床がフラットで足もとスペースも広くて快適。巨大なパノラマルーフによって非常に開放感にあふれていた。
さて、気になる試乗。アクセルを踏んだときの加速はEVらしい鋭いもの。ドライブモードは「ノーマル」「エコ」「スポーツ」の3つが選べ、また制動による回生の強さも調整可能だ。今回の試乗は、発表会場まわりの一般道をぐるっと1周するだけの本当に簡易的なコースであったため、試せたことは非常に少ないが、その間にネガティブなことを感じることは一切なかった。
ステアリングはリニアに反応するし、キビキビと走るし、乗り心地もいたっていい。頭の片隅には常に中国クオリティを意識していたのだが、それはいい意味で完全に裏切られた。どうやら「中国製」のイメージを根本から書き換える必要がありそうだ。
さて、こうなると気になるのは、購入後のサービス体制だが、BYDでは、昨今流行りのインターネットによる車両販売ではなく、ディーラー網をきちんと整備しての販売を行うという。日本全国にどのくらいのBYDディーラーが用意されるかは不明だが、少なくとも車両の修理で路頭に迷うということだけはなさそうだ。
今回発表された3モデルは、いずれも2023年内の日本導入を目指しており、価格の発表はなかった。バッテリー容量や装備が日本仕様として予定されているものとは異なるため、そのまま単純に比較することはできないが、参考までに中国においては、アット3は13万7800〜16万5800元(約280万〜335万円)、ドルフィンは10万2800〜13万800元(約210万〜265万円)、シールは21万2800〜28万2800元(約430万〜585万円)で販売されている(いずれも編集部調べ)。
今回試乗したアット3はオーストラリア仕様の右ハンドルモデルであるらしく、現地では4万4990〜4万7990オーストラリアドル(約424万〜452万円、編集部調べ)で販売されているから、日本仕様の価格もそれに近いものになると予想できる。いずれにしても、このサイズ、クオリティのミドルサイズSUVがEVとして400万円台で買えるとしたら、それはかなり魅力的となるように思うがいかがだろうか。
一挙3モデルを日本に導入するというサプライズのあったBYDの発表会。正式な価格の発表、そしてローンチが楽しみで仕方がない。