初代を彷彿させるフレンチスポーツは軽快そのもの
次に「A110 S」に乗り換える。
今回、この試乗車にはオプションで用意されているタイヤ「ミシュラン パイロットスポーツカップ2」と、これも本来はオプションとなるエアロスポイラーがフロントとリヤに追加装備されている。これらのエアロ効果は非常に効果的で、最高速250km/hあたりのダウンフォースはノーマルでも275kgも引き出されているが、さらにフロントアンダースポイラーで+60kg、リヤで+81kgにもなる。また、最高速度も+15km/h向上するほど効果的だという。
元々、重量配分の良いA110にダウンフォースが増加することで、より高い限界性能が引き出され、カップタイヤのハイグリップ性能と組み合わせれば、サーキット走行などでも存分に攻め込んで楽しむことができるだろう。
室内はアルカンターラ調のバックスキンで覆われたダッシュボードが非常にスポーティで、シートはリクライニング機構を省いた軽量のセミバケットシートが装着されている。装着角度はオリジナルの状態でも非常にフィッティングが良く、リクライニング機構を必要としないほど最適化した運転姿勢がとれる。
また、A110 Sには助手席にもアルミ製のフットボードが備わっていて、しっかりと足を踏ん張り、高いGフォースに耐えることができる。
エンジンのパフォーマンスやトランスミッションの構造や機能、スポーツモードなどの設定はGTとSの間で差はない。ただし、Sはさらにカーボンルーフが標準装備となっており、より軽量化を突き詰められた仕様だ。
ミッドシップレイアウトのエンジンは、ウエットサンプ潤滑方式で重心が低い訳ではないが、サスペンションのロール軸やシートのヒップポジションの位置関係のレイアウト、パッケージングにより非常に軽快でスポーティかつ高い限界性能を発揮するマシンに仕上がっている。
それでいながら、アルミのフロントボンネットフード下には40kgの重さに耐えるトランクスペースが備わり、リヤエンドにもトランクがあってシート裏の物置スペースと組み合わせると、かなりの手まわり品を乗せることができるのはありがたい。
エンジンフードはガラスのリヤウィンドウが兼ねていて、開けるにはリヤトランク裏の3つのネジを外してエンジンカバーを取り出さないとエンジンを見ることはできない。エンジンは横置きで、メガーヌなどと共通となる普通のエンジンだが、大分チューニングが異なるようで、アルミ製のスペースフレームとエンジンマウントにより、軽量な車体への剛性面も考慮して、強固にドッキングされていることがわかる。
前後ダブルウイッシュボーンのサスペンションは、A110 Sにおいてはよりロール剛性やダンピング特性を強めたものが採用されていて運動性能はさらに一段引き上げられている。
一般道においての快適性はもちろん損なわれておらず、ミッドシップスポーツカーと思わせる軽やかで、かつ滑らかな走りを楽しむことができ、一方でサーキットなどに持ち込めば高い限界性能とミッドシップらしい安定した車両姿勢、そしてコントローラブルなハンドリングを引き出せるはずだ。また機会があればサーキットでのアタックなども行いたいものだ。
現在、A110は全日本ジムカーナ選手権などにおいても2ペダルで電子パーキングブレーキとの組み合わせを持っているクラスで圧倒的な強さを誇っており、他を寄せ付けない実績を残している。そういう意味でモータースポーツのベース車としても非常に高い素性を持っているわけで、アルピーヌの名を代表する現代のマシンとして十分な役割を果たしているといえるだろう。