この記事をまとめると
■現在でも、ダッシュボードにアナログ時計が配された高級車が存在する
■液晶モニターにデジタル表示とは別にアナログ表示を用意しているモデルもある
■人の感性に訴える上級モデルにはアナログ表示の必要性が高まっている
超高級車にあえてアナログ時計を配する意味
最新型の超高級車には、アナログ時計がついている場合がある。なぜだろうか?
世の中はいま、DX(デジタルトランスフォーメーション)の真っ只中にある。また、自動車開発でいえば、CASE(ケース)と呼ばれる、C:通信によるコネクティビティ、A:自動運転や自律走行、S:ライドシェアリングなどの新しいモビリティサービス、E:世界的に一気に広まる電動化、という技術革新の4本柱がある。
そんな時代であれば、クルマの中の各種表示はすべてがデジタル化され、仮にアナログ時計の雰囲気を出すにしても、その表示方法はデジタルで行えばいいと思う人もいるだろう。実際、そうした表示を行うモデルもあることは、多くの人が知っているところだ。
それでもなお、完全なるアナログ時計を組み込むダッシュボードが、最新モデルに採用されることがあるのだ。
ここで、少し時計の針を戻して1981年の出来事を振り返ってみたい。
当時にヤマハ発動機・静岡県袋井テストコースで開催された、トヨタ新型「ソアラ」(初代)の報道陣向け試乗会に参加した。実車に乗り込んで、コースを走行しながら「これからの時代、こうしたメーターが当たり前になるのだろうな」と感じた。スピードメーターもタコメーターもデジタル表示となって登場した、ソアラという新しいクルマに接しながら、未来に向けて想いを馳せた。
確かに、それ以降に登場した日系メーカー、欧州メーカー、米メーカーはデジタルメーカー化が進み、時計についてもアナログからデジタル表示に変わっていった。
そうしたデジタルなインテリアデザインに対する考え方が、2000年代半ば頃から変化し始めた。
当時、日系大手メーカーのデザイン統括部長は「人の感性に訴える上級モデルはこれから、アナログ表示の必要性が高まる」と説明していた。その上で、車内の時計についても「アナログ時計を採用する場合、デザインにおいても、正確性という機能においても、徹底した作り込みが必要だ」とも話していた。
2022年の現在、人は時間を確認する場合、スマートフォンを見ることが多い。スマートフォンのアラーム機能を使うことも珍しくない。
一方で、腕時計をする人もまだまだ多い。アップル製などのスマートウォッチをする人もいるが、それはけっして主流だとは言い切れない。アナログ時計をファッションアイテムとして使っている人も少なくないのが実情だ。
こうした日常生活での、アナログ時計とデジタル時計表示との関係性は、クルマのインテリアについても通用するということなのだろうか?