マツダが生き残りをかけて掲げる「2%戦略」とは?
しかし、それこそがマツダの生き残る道ともいえる。
10年ほど前からマツダは「2%戦略」という言葉を使っている。これはマツダのグローバルシェアが2%程度であることを前提に、万人受けする商品企画ではなく、市場において2%のコアな層、マツダというブランドへのロイヤリティが高いユーザーに向けた商品づくりへとシフトしているのだ。
2%というのは、いってみれば50人にひとりという割合であるから、極端に少数派というわけではなく、かといってメジャー路線ともいえない微妙なターゲットだ。例として挙げるのは適切でないかもしれないが、2022年7月に行われた参議院選挙における比例代表の得票率でいうと、社会民主党とNHK党がいずれも2.4%だった。いずれも多くの国民が党首の顔を思い浮かべることができる政党だろう。少なくとも2%というターゲットは、そのくらいの認知度の実現を意味しているといえる。
シェア2%を狙うのであれば業界の主流となる商品企画でなくとも達成できるというのも想像できるだろう。むしろ逆張りによって目立ったほうがブランドとしての存在感は増す。逆張りという表現は失礼かもしれないが、マツダがあえて2020年代にFRプラットフォームと直列6気筒エンジンを新たに生み出したことは「2%戦略」からすれば正解といえるのかもしれない。
さらにいえば、日本向けのCX-60にはガソリンの直6エンジンを用意せず、あえてフラッグシップを直6ディーゼルに設定したというのも正解だと感じる。
かつてのように欧州自動車市場はディーゼル天国ではなくなっている。ユーロ圏での自動車販売をウォッチしている自動車ファンならばご存じのように欧州ではディーゼルが減り、そのままプラグイン車(電気自動車とプラグインハイブリッド)に置き換わっているというのが、ディーゼルゲート(フォルクスワーゲングループによるディーゼル不正)以降のトレンドだ。
さらに欧州はもとより、アメリカや韓国といった自動車産業が盛んな国々では、ディーゼルエンジンが使う軽油は、ガソリンよりも高価な燃料となっている。実際、日本でも税金を除くと軽油のほうがレギュラーガソリンよりも高かったりする。
世界的に大きな自動車市場のなかで、軽油がガソリンより安くなっているのは、日本と中国くらいだろう。つまり、日本ではディーゼルというだけでコストメリットが生まれるのだ。その意味では、少なくとも日本向けに直6ディーゼルを用意するというのは「2%戦略」からすれば納得である。
直列6気筒エンジンならではの静粛性や気持ちいいまわり方を考えると、マツダというブランドを象徴する存在になり得るだろう。
将来的には「6気筒エンジンといえばマツダ」といったブランディングに成功しているかもしれない。そうしてブランドのプレミアム度を高めることにつながれば、2020年代に直列6気筒エンジンとFRプラットフォームを新開発したことは英断であったと後年評価されることだろう。