この記事をまとめると
■マツダが新型車CX-60のために直6エンジンとFRプラットフォームを新開発した
■全市場の2%に向けた商品でニッチな層を取り込む戦略により生き残りを図っている
■将来的には直6エンジンがマツダを象徴する存在にもなる可能性を秘めている
マツダがまさかの直6とFRプラットフォームを新開発
マツダが、2022年9月の発売をアナウンスしたCX-60は、エンジンを縦置きにするFRレイアウトの新プラットフォームを採用したことが最大のトピックスとなっている。しかも、縦置きを前提に「直列6気筒」エンジンを新開発したというのも注目度を上げている。
グローバルには、新開発した直列6気筒エンジンは3.0リッターガソリンと3.3リッターディーゼルを設定、日本市場には3.3リッターディーゼルを投入する。純粋にディーゼルを味わえる「SKYACTIV-D 3.3」と、48Vマイルドハイブリッドの「e-SKYACTIV-D」 というふたつのパワーユニットが用意されることは発表済みだ。
それにしても、世界中が電動化に傾倒しているなかで、あえて6気筒エンジンを新開発したというのは驚きだ。それも横置きにも適用可能なV型6気筒ならまだしも、ほぼ縦置きしか考えられない直列6気筒というのだからなおさらといえる(過去にボルボなどで直列6気筒の横置きFFという事例はあるが)。
では、2020年代にV6ではなく直6エンジンを新規開発する合理性はあるのだろうか。そこでは「モジュール設計」という考え方がヒントになる。エンジン設計でいうモジュール化というのは、シリンダーごとの設計を共通化して、気筒数を変えることで排気量のバリエーションを増やすというアプローチだ。
カタログスペックでわかりやすいのがボア×ストロークが同じ数値で気筒数のみ異なるエンジンで、BMW MINIの1.5リッター3気筒と2リッター4気筒は気筒容積が同一の典型的なモジュール設計のエンジンファミリーとなっている。
そうした点でマツダの直6エンジンのスペックを見ると、ボア×ストロークは86.0×94.2mmとなっている。燃焼室設計などは最新の知見を活かしてアップデートされているのだろうが、これは4気筒のSKYACTIV-D 2.2と同じスペックだ。4気筒エンジンに2気筒を足して6気筒エンジンにするというモジュール設計的アプローチであれば、まったく設計の異なるV6よりも共通部分を多くできる直6を選ぶほうが合理的といえる。
それでも、このご時世に新規でFRプラットフォームを起こしてしまうことを前提として直6エンジンを開発するというのは、あまりにも常識外れといえる。それでもBMWのように直列6気筒エンジンをブランドアイデンティティにしてきているのであれば納得できる部分もあるが、マツダのアイデンティティといえるエンジンはロータリーであってレシプロではないだろう。
世界中がダウンサイジング、レスシリンダー、電動化に向かっている中での「大排気量・直列6気筒」というのは、あまりにも逆張りという印象さえ受ける。