EVによって停電を防ぐという社会が来ると想像できる
というわけで、現状の保有台数においてはEVが電力需給ひっ迫に与える影響はほとんどないといえるわけだが、これからEVの普及が進んでいくとどうなるのだろうか。状況によってはEVの充電禁止といった話になるのだろうか。
じつは、逆にEVによって停電を防ぐという社会が来ると想像できる。
EV関連として「V2X」という言葉を見聞きしたことがあるだろうが、これはV2L、V2H、V2Gといった用語をまとめたものだ。
Vが示すのは自動車のことで、主にV2LはEVと家電をつなぐことだ。V2Lについてはアウトドアレジャーなどで利用している人も多いだろう。EVに限らずハイブリッド車でも1500Wのコンセントを有しているケースは多い。
V2HはEVによって家屋の電力供給を行なうことだ。専用の機器が必要となるが災害対策として設置している家庭も増えているという。太陽光発電と組み合わせて昼間の発電をEVのバッテリーに溜めておき、夜間に利用するといった使い方も可能になっている。
そうした再生可能エネルギーによる発電の安定化にEVを利用しようというのがV2Gとなる。EVのバッテリーをグリッド(地域の電力線)の安定化に利用しようというもので、シェアリングカーのEVバッテリーを、地域の電力バッファとして利用するという社会デザインはかなり具体的に考えられている。
EVが増えると電力不足が加速するというのは間違っている。
むしろカーボンニュートラルを前提にすると、電力の安定供給にはEVが欠かせないという未来が見えているのだ。「電力不足だからEVは普及しない」と考えてしまうのは早計だ。