ようやく時代がピールP50に追いついた?
これに納得しなかったのか、よほどピールに憧れでもあったのか、ヒルマン氏はP50のリプロダクションを決意。友人であり、フィナンシャルパートナーでもあるファイザル・カーン氏とともに元の権利を購入し、ロンドンに新生ピール・エンジニアリングを創設したのです。
現代版、といってもオリジナルにきわめて近いスペックで、ホンダ製4ストローク49ccエンジン(モンキーなんかに使われてたもの)が選ばれ、ミッションはCVT(無段変速機構)となりました。もちろん、昔のテレビゲーム(16bit)に出てきそうな特徴的なボディ、シングルライトなどはオリジナルそのもので、カラーバリエーションすら当時のラインナップを踏襲するという徹底ぶり。最高速度45km/hながら、スピードメーターはなにを思ったか160km/hまで刻まれているそうです。
で、ヒルマン氏が男気を見せたのが価格設定! 当時の3万円からははるかに値上がりしていますが、オークションやマニア間で取引されている値段のほぼ10分の1、約200万円というじつに良心的な値付けがされたのです。
そうはいっても、昔のバブルカーなんて今の交通事情には合わないし、物好き&ミーハーがからかい半分で乗ってんでしょ、と思いきや、これがそうでもないらしいのです。
最大のマーケットは意外なことにアメリカで、こちらは排ガス規制をクリアするためにEV化されたP50を販売中(最近はこのアイディアが鉄板ですよね)。また、ドバイの皇太子や、アブダビのミリオネアが広大な敷地の中で走り回るなど、楽しんでいるようです。もちろん、ご当地イギリスでもクルマ番組「トップギア」で取り上げられた回がトップ5に入る人気で、注目度は抜群なようです。
ちなみに、冗談みたいなことを本気で取り組んじゃう英国人気質がなせることだと思いますが、P50にはごく少数ながらスポーツバージョンが存在していました。といってもキャノピーが透明なアクリルで、バブル形状をしているだけなのですが、こちらは「トライデント」と呼ばれ、新生ピール・エンジニアリングはこちらのリプロも計画しているとのこと。
こうなると、マイクロカーマニアだけでなく「可愛いもの好き」はみんな巻き込まれそうではあります。この勢いでもってヒルマン氏のプロジェクトが世界中に波及し、インチキじみたEVなんか駆逐してくれること、望んでいるのは決して筆者だけではないでしょう。