この記事をまとめると
■イギリス領マン島に存在したピールは1963〜1965年にかけて「P50」というクルマを販売
■全長1.3mで49ccの2ストロークエンジンを搭載し、当時の価格は199ポンド(約3万円)
■2010年にピールP50はEVとしてリプロダクションされた
まるでキッズカーのようだけどれっきとしたクルマ
ヒトは手のひらサイズのものに愛着がわきやすいのだそうですが、やっぱりクルマもデカいのより小っちゃいほうが可愛らしく思えるもの。そこへいくと、1960年代に世界中で流行したマイクロカーなどは最たる可愛らしさで、目の中に入れても痛くないというマニアがごまんといるようです。とりわけ、イギリスのゲイリー・ヒルマン氏がマイクロカー「ピールP50」に注いだ愛情やらこだわりは常識の域をはるかに超えて、誰もが驚くようなストーリーを生み出したのです。
そもそもピールなんてメーカー、たいていの方はご存じないでしょう。TTレースで有名なイギリス領マン島にかつて存在したファクトリーで、元はFRPパーツベンダーでした。で、お得意のFRP製作技術でもってボディを作って、ドイツ製(DKW)2ストローク49ccエンジンを搭載したのが「ピールP50」というマイクロカー。
前2輪、後1輪というマイクロカーにありがちなレイアウトで、3速MTは前進のみの設定でした。バックしたいときはどうするかって? このP50は、全長1.3mというギネスブックにも登録された世界最小サイズのクルマなので、リヤバンパーにあるハンドルバーでたやすく引っ張れるし、なんだったら持ち上げたりすることも可能だったのです。歩道で時折見かけるシニアカーの全長がだいたい1.2m程度ですから、ギネス入りも納得の大きさというか小ささか。
当然、キャビンもミニマムで「大人ひとりと買い物バッグ」サイズ。誇張でもなんでもなく、ヒトが乗車している写真を見れば思わず口元がゆるむほどの可愛らしさ。
それでも、マン島やイギリス本土の路地裏にはピッタリで、それこそ現代のシニアカー並みに重宝されたかと思いきや、1963年の発売から2年の間にわずか47台が生産されただけで終了。当時の価格は199ポンド(≒3万円)というお買い得なものだったにも関わらず、最近のオークションに出品された際は、なんと10万5000ポンド(≒1600万円)に化けたのです。