かつてクルマが安価に「工場引き渡し」で買えたってマジか! なぜクルマの「工場直売」は消えたのか?

この記事をまとめると

■お菓子やパン、弁当など、工場直売で買える商品がある

■過去、一部のクルマが工場で引き渡されていたが、現在は行われていない

■クルマが工場直売で買えない理由について解説する

納車後のアフターフォローなどの問題がある

 お菓子やパン、弁当など、工場併設の売店というのをよく見かける。そこで作っているので、売るのは簡単というか、商売的な効率もよかったりする。そこで思うのが、クルマはなぜ工場で売らないのかということ。直接工場で買うことができれば、新鮮というのはないにしても、陸送費もかからず、買うほうも売るほうもラクな気がする。

 じつはその昔、1950年代から1960年代には工場引き渡しというのがあった。初期の頃のホンダではディーラー網が弱かったこともあってけっこう多く、N360は工場渡しの価格ながら、低価格でライバルを圧倒してヒットの一因となった。工場に取りに来てくれれば手間も省けるので安くなるのは当たり前で、逆に当時は工場から遠いところでは価格が高いことも多かった。つまり地域別価格が設定されていて、もちろんこれは配送の手間分。現在でも北海道と沖縄などは別価格になっていることがある。

 では、なぜ現在では工場で引き渡しができないのか? まずはオーダーの複雑さがある。その昔はグレードや設定オプションも少なかったので、注文しやすかった。ただ、それは本当に初期の頃の話で、車種、グレード、装備などが増えれば、たとえ別の部署が受注してくれたとしても大変になってしまうだけ。また、クルマは工場から出た状態では、まだディーラーオプションが付いていなかったりして、完全ではない。そもそも昔とは販売台数も違うわけで、そこに対応しだすと生産という工場本来の機能が麻痺しかねない。

 さらに言うと、納車後のアフターフォローも問題だ。その昔であれば近所の修理工場で面倒を見てもらえたが、今は複雑化しているためディーラーでないと対処できないことも多い。この点でも工場でただ引き渡すだけでは無理だ。

 そしてディーラーとの関係もある。フランチャイズのほうが多く、メーカー直営にしても別会社だったりする。そうなると、メーカーが運営する工場で販売されるのは商圏の侵害にもなるわけで、直販する意味もない。アウトレットなら工場の横で販売してもいいだろうが、服ならいいがそもそもクルマではありえない。

 いろいろと考えていくと、工場渡しというのは自動車創成期の牧歌的なサービスだったと言っていいだろう。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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フィアット500(ヌウォーバ)/フィアット・プント/その他、バイク6台
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レストア、鉄道模型(9mmナロー)、パンクロック観賞
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