最後はマーケティング戦略とブランディング力が物を言う
2番目の理由については、1979年にデビューした最初のGクラス、コードナンバーW460の軍民両用だったイメージに依存しているのだと思う。
僕も若い頃に乗ったことがある正規輸入車は230GEと300GDで、ATが4速だったこともあり、オンロードではどちらもアンダーパワーだった。オフロードでの走破性はトップレベルだったけれど、一部のマニアが注目していたにすぎない。
ところが1990年にモデルチェンジを受けて登場したW463は、純粋に民生用として開発された。多くの人が乗るようになったのはこの世代以降だ。ちなみに軍用としては別にW461が、W460の設計を受け継ぐ形で登場しており、現在はW464に進化している。
この間W463はビックマイナーチェンジを受け、それまでリジッドだったフロントサスペンションが独立懸架、ステアリング形式がボール循環式からラック&ピニオンになるなど、民生用としてさらなる最適化が図られている。
つまり、コードナンバーが示しているとおり、現在日本で販売しているGクラスを、軍用車と同じと言うのは間違いだ。
とはいえ似たような例はほかにもある。たとえば今年のル・マン24時間レースでクラス優勝したポルシェ911RSRは、リヤエンジンではなくミッドシップだったりする。
当然ながらメーカーは同じクルマだと明言はできない。でもそこで簡単にあきらめたりはしないのがゲルマン魂。両者につながりがあることを可能な限りアピールする。スタイリングを瓜ふたつに仕立てる作業もそのひとつ。
そこまで入念に準備したうえで、あとはユーザーの責任として、レーシングカーとスポーツカー、軍用車と民生用車を結びつけてもらうのだ。
だから仮にW463のユーザーが「オレは軍用車に乗っているんだぜ!」と自慢しても、メーカーやインポーターは注意しない。作戦どおりなのだから。
ドイツの自動車ブランドは概してこういうストーリーづくりが上手であり、こうした戦略もGクラスや911の根強い人気につながっていると思っている。