スポーツ走行時を考えると今でもFRのほうがメリットが多い
でもそれは、タイヤやボディの進化とセッティングの妙でカバーしているだけであって、FFの基本特性は今も昔も変わっていない。
重量バランスでいえばフロントヘビーであることには変わりないし、タイヤの摩耗も明らかにフロントタイヤの減りが早い。
やっぱりナチュラルさという意味では、操舵輪と駆動輪が別々の後輪駆動車に軍配が上がる。
結果としてのパフォーマンスでいえば、よくできたFF車は平凡なFR車よりも優れた走りを実現しているのも事実。
しかし、そうしたよくできたFF車は、人間でいえば仕事も家事も育児も趣味も、(フロントタイヤだけで)全部ワンオペでこなしているようなもの。
それはそれでいいのだが、前輪と後輪で負担を分担し、ワークライフバランスを重視した生き方に近いのが後輪駆動車で、それを好む人がいたとしてもおかしくはない。
もっとストレートにいってしまえば、後輪駆動車はパワースライドができるが、FF車はアンダーステアが出たら、アクセルを戻してグリップが回復するのを待つしかない。
FRならアクセルオンでリアのコーナリングフォースを減少させて、ドリフトアングルがコントロールできる余地がある。
ドリフトできるスキルがあるかないかは別として、「アクセルオンで曲げていける余地がある」ことは、スポーツ走行を愛する人にとってある種のキモ。
「踏んで曲げる」というアグレッシブな走りの魅力を知ってしまった人は、後輪駆動に強いこだわりがあるだろうし、昔憧れたクルマが全部後輪駆動だったという人も、なかなか趣味のクルマとしてはFF車を受け入れられないのかもしれない。
とはいえ、モノの良し悪しではなく、好き嫌いで選べるのが趣味であり、道楽であるわけで、そうした後輪駆動車派が、FF化を歓迎できない気持ちはよくわかる。