走行性能に関わると知られているボディ剛性はアピールしやすい
実際、燃費性能の向上は、ユーザーにとって使用燃料量の低減を意味し、懐に優しい性能進化とも受け取られているが、社会的には消費燃料量の低減化は、排出ガス総量の低減を意味し、二酸化炭素の削減に直結する重要な性能向上と受け止められている。いずれにしても、燃費性能の向上がユーザー心理に働きかける影響力は大きく、セールスポイントとして必要不可欠な要素となっている。
ボディ剛性についても、新型が登場するたび「対前モデル○%アップ」といった表記を目にするが、これも材料工学や製法の進歩によって無限に進化を続けているような印象を受ける。車体剛性については、ねじり/曲げ剛性に関してこの数値があれば絶対という基準値はなく、また完全剛体を実現するのも事実上不可能なことで、前製品に対して相対的に性能が向上したことを、アピールポイントとして強調している。
もっとも、実際のところ、ボディ剛性の向上を体感できるドライバーが何人いるのかという話だが、ボディ剛性の向上が走行性能(サスペンションの支持剛性、所期の動きの実現など)に及ぼす影響が大きいことは、メーカーのPR、専門誌などのリポートでよく知られており、メーカーは新型車のPRポイントとしてこの点を突いてくるわけだ。
こうした状況は、技術が日々進化していることを裏付けるもので、素材でいえば、構造材として用いる高張力鋼板の進化が、車体剛性の向上に大きく関わっている。簡単に言えば、通常の鋼板に比べて薄く(=軽く)強度に優れた鋼板のことで、降伏点や引っ張り強度のレベルから、スーパーハイテンションスチール、ウルトラハイテンションスチール、エクストリームリーウルトラハイテンションスチールなどに分けられ、配合成分の改良、製造方法(温間/冷間)の進化によって、より軽く、より強度に優れた鋼板が次々と登場しているのが現状だ。
もちろん、車体剛性という意味では、最新のル・マン・プロト(ハイパーカー)に代表される、ルーフまで一体化したカーボンフルモノコックシャーシーを見れば、量産車とは次元の異なるレベルにあることはすぐに理解できると思うが、超々高張力鋼板をプレス加工、溶接で組み上げた市販車のモノコックボディ(プラットフォーム)も、日々進化を遂げる自動車メカニズムとして、確実にその性能を引き上げている。技術の進化は、過去の常識では考えられない性能の確立を可能にしている。