クルマの事故は激減しているのに「自賠責保険料」がまさかの値上げ! 借りたお金を返さない「財務省」に原因か (2/2ページ)

政府が主張しているのは自賠責保険の積立金不足

 今回の法改正では、この賦課金が現状では足りないということで、この部分を最大150円程度まで一気に値上げしようというわけだ。

 理由のひとつとしては、交通事故死者が減少している一方で、介護料受給資格者は微増しているという点が挙げられる。車両・医療の技術発展により交通事故による死者が激減しているのはご存じの通りだが、重度後遺障害者は減っているわけではなく、つまり自動車損賠賠償保障事業から支払われる介護料も増えているといえる。

 無保険車によって被害者となった人には何の罪もなく、政府が補償事業を行うというのは否定すべきことではない。その原資として自賠責保険に十数円の賦課金が含まれているという点においては理解できるといえる。とはいえ、賦課金をいきなり150円に増額しようというのはあまりに乱暴だ。

 その背景として政府が主張しているのは自賠責保険の積立金不足だ。補償事業に使われる予算は、積立金の運用益によって賄われるというのが原則だが、積立金が足りないために種銭となる積立金自体を取り崩すことになっているという。種銭が減れば運用益も減るわけで、補償事業が持続できなくなるのは明らかだ。そのために賦課金を増額するというわけだ。

 しかし、そもそも積立金がこうして危機的状況になったのは、1994~1995年に自賠責保険の積立金を国の一般会計に、最大1兆1200億円が繰り入れられたことにある。後に、一般会計から自賠責保険の積立金へと返還されているが、いまだ6000億円超が返還されていない。

 仮に、6000億円を年利4%で運用すれば運用益は240億円となる。一方で、日本でナンバーをつけている車両の台数は約8200万台であり、一台あたり150円の賦課金を負担させたとしても123億円にしかならない。

 旧大蔵省が一般会計に算入したままとなっている6000億円を自賠責保険の積立金として返還して、それを運用すれば賦課金の増額などせずとも足りてしまう計算となる。

 合理的かつ倫理的に考えれば、財務省が借りた金を返して、適切に運用すれば賦課金の増額(≒自賠責保険の値上げ)は不要だ。こんな簡単な計算ができない国会議員は何のために存在しているのか大いに疑問だ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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