チラツキの発生は避けられない
では、否定派の意見を聞いてみましょう。これは年齢が上がるほど増えてくる、「なかなかピントが合わない」「疲れる」というデメリット。従来の鏡のミラーなら、焦点距離が前方視界の実像と同じなので、視線を前方からルームミラー、サイドミラーと頻繁に移しても焦点はほとんど変わりませんでした。それがデジタルインナーミラーは液晶ディスプレイなので、焦点を合わせてから視認することになります。若い世代はそれに慣れるのも早いのですが、加齢とともに眼の調整力が低下してくるにつれて、焦点が合わせにくくなり、はっきりと見るために眼を酷使することになって、それが「疲れる」と感じる原因と言えそうです。
また、これは年齢に関係なく「気持ち悪い」と感じるデメリットが、デジタルインナーミラーでどうしても発生してしまうチラツキ(フリッカー)。カメラを通して液晶ディスプレイに映し出される映像は、連続する静止画で構成されています。一方でLEDライトも細かく速い速度で点滅しており、これが液晶ディスプレイの表示と干渉してチラツキとなってしまうのです。後続車のLEDライトだけでなく、近年は街中の信号機やネオンサイン、道路標識などあちこちにLEDが使われているので、一度気になってしまうとストレスに感じる人も多そうです。
さらに、カメラを使っている以上、どうしても影響してしまうダイナミックレンジの狭さ。デジタル一眼レフカメラで写真を撮ったことがある人なら、光の加減で写真に白く飛んでしまう部分や、黒くつぶれてしまう部分ができてしまった経験があるかもしれません。デジタルインナーミラーも同様で、暗いトンネルを抜けた途端に真っ白に映ってしまったり、その逆もしかり。人間の眼でも明順応・暗順応という現象は起こりますが、カメラより柔軟な対応ができているのです。こうしたデメリットに対応するために、じつはデジタルインナーミラーには、従来の鏡タイプに切り替えて使える機能が備わってるものがほとんど。違和感を感じる場合には、無理にデジタルインナーミラーを使わず、従来タイプに切り替えて、フレキシブルに使い分けるといいでしょう。
ただ、なかには「絶対に鏡派」という人もいます。それは、後部座席に子供を乗せているため、子供の様子をミラーで確認したいから、というのが理由です。とくに、後ろ向きチャイルドシートを装着している場合には、後部座席のヘッドレストに子供の姿を映す鏡をセットしておいて、ルームミラーで合わせ鏡のようにして子供の様子を確認する人も多いです。デジタルインナーミラーでは車内がまったく映りませんから、そうした使い方ができなくなります。
また、これは本来の使い方とは違うのでどうかなという気もしますが、信号待ちなどでリップを塗り直したり、前髪を直したりするのにルームミラーを使いたいから、という女性もいました。そのためのバニティミラーがあるのでは? と聞くと、「サンバイザーに物を挟んでいるので下げられない」「バニティミラーを使ってるといかにも化粧直してます、みたいで恥ずかしいから」といった答えも。これは少数派の意見ですが、確かにデジタルインナーミラーでは化粧直しは無理ですね。
ということで、ますます搭載が進むと思われるデジタルインナーミラーに対する、肯定派と否定派の意見をご紹介しました。あなたはどっち派ですか?