エンジンとモーターの組み合わせが元々の素性をより強調する
完成したこのパワートレイン、ルーテシア用では1.6リッター自然吸気エンジンが91馬力と144Nm、メインモーターが49馬力と205Nm、サブモーターのスタータージェネレーターが20馬力と50Nm。
Bセグメントの実用ハッチバックとしては、充分以上に納得できる数値といえるだろう。さらにはWLTCモードで25.2km/Lという燃費性能は、並み居る日本勢には及ばないものの、これまた充分以上に立派な数値といえるだろう。
パワートレインの構造を理解するのはむずかしいかも知れないが、このクルマのよさを理解するのは簡単だ。シフトセレクターを動かして、あとはアクセルとブレーキのペダル、そしてステアリングを操作するだけ。パドルもなければシーケンシャル操作をする構造にもなっていないのだ。ドライビングそのものは極めてシンプル。
発進はモーターのみで、40km/hを越えて少しするとエンジンが始動してエンジンとモーターの両方で前輪を駆動する。アクセルペダルをオフにするとエンジンが停まって回生が始まる。そうした一連の流れは、ほかの一般的なハイブリッドと変わらない。
ちなみに僕は高速領域をあまり試すことができなかったのだけど、80km/hを越えると駆動はエンジンが主体となって、追い越しなどでさらにチカラが必要になったときにはモーターがアシストし、巡航時には1.2kWhのバッテリー容量が満たされたらモーターのみで走行して減ってきたらエンジンを始動させ……を繰り返すらしい。
なるほど、一般的なガソリンエンジンのコンパクトカーは高速走行になると燃費がグンと落ちるクルマが少なくないけれど、ルノーはそうして高速時の好燃費も稼ぎ出してるわけか。
ドライバーが感じることは、まずは室内が静かなこと。それはエンジンが始動してからも変わらないこと。
EV走行とエンジンが始動してのハイブリッド走行、それにわずかながら走った高速道路でのエンジンで駆動と発電を行う走行の切り換えが、注意してないと気づかないときがあるくらいスムースにしてシームレスであること。
スポーツモデルではないのでかなり速いというわけでもないが、ゼロ発進はもちろん、少なくとも日本の高速道路の流れぐらいまでの間では充分な力強さが感じられて、加速感などにも不満らしい不満はなかったこと。
エンジンとモーターの連携と協働が見事だからなのか、ギヤボックスがメカニカルなものだからなのか、加速や減速は素晴らしく小気味がいいこと。これはギヤボックスがメカニカルなものであるおかげだが、いくつかのハイブリッドモデルでときどき感じるCVTのダルさがまったくないこと。
そして何より、ルーテシア持ち前の良好な乗り心地や気持ちのいいハンドリングが悪化していないどころか、むしろそれぞれちょっとずつ、さらによくなってるんじゃないか? とすら感じられたこと。
もともとのルーテシアの持ち味が、さらに膨らんでるように思えてならなかったのだ。「最良のルーテシアは?」と問われたら、僕は迷わずE-TECH HYBRIDを推す。
価格は329万円から。確かにガソリンエンジンのもっとも安価なモデルと較べたら62.1万円ほど高価ではある。けれど、それだけの価値は間違いなくあると思うのだ。