この記事をまとめると
■クラッチはMTだけでなく、ATやDCTにも使われている
■強化クラッチを無闇に入れるとクルマによくない場合がある
■クルマのパワーや使い道によって使用する素材を選ぶのがベストだ
ただ繋ぐだけじゃない奥が深いクラッチの世界
自動車の駆動系の主力部品でもあるクラッチ。「clutch/クラッチ」とは、「つかむ、握る」という意味であり、原動軸から従動軸に、任意に断続して動力を伝える機械装置のことだ。
自動車用のクラッチでは、MT車用の乾式クラッチがよく知られているが、ATにもクラッチは備わっていて、AT用のクラッチはオイルに浸されて複数枚のクラッチ板を使う、湿式多板クラッチが採用されている。
2系統のギヤにそれぞれクラッチがあるデュアルクラッチのDCTでは、湿式多板、乾式多板、乾式単板の3タイプのクラッチがあり、スポーツカーなどトルクの大きなエンジンを搭載するクルマは、湿式多板クラッチが主流。
小型車だとシンプルで伝達効率がよく、コスト的にも優れる乾式単板クラッチのDCTが向いている。
湿式クラッチはオイルに浸されている分、若干の抵抗と伝達ロスがあるが、大トルクに対応し、クラッチの摩耗が少なく長寿命。
一方、MT車は基本的に空気で冷やす乾式クラッチ。伝達効率に優れ、クラッチの切れている時とつながっている時の違いが明確。基本的に定期交換部品となるが、その分交換作業がしやすく、メンテナンスしやすいのがポイント。
あとは素材。
純正のクラッチは、ペダルの踏力も軽く、半クラッチが使いやすいノンアスタイプ。
価格も比較的安価だが、摩擦力は強いとはいえず、大パワーを受け止めるだけの容量はないので、エンジンをチューニングしてパワーアップした場合、そのパワーに見合った容量のある、いわゆる強化クラッチが必要になる。
強化クラッチにも、素材としてはノーマルと同じノンアスのものもあれば、メタルクラッチ、カーボンクラッチ、そしてカッパーミックスなどがある。
メタルクラッチは、伝達トルクが大きく、キレやつながりがよく、寿命も長くなるが、半クラッチは扱いづらくなり、ペダルの踏力も重くなる傾向だ。
カーボンクラッチは、伝達トルクが高く、軽量などでエンジンレスポンスも向上し、シフトフィールもよく、半クラッチも使いやすくて、寿命も長い。
その分高価なのが玉にキズ……。
カッパーミックスは、ノンアスベストをベースに特殊製法で銅(カッパー)の含有量を高めたクラッチ。渋滞でも扱いやすく、高い伝達性能を両立。ノンアスとメタルのいいとこ取りをしたようなクラッチだ。