後半区間には超高速コーナーの130Rが待ち構える
デグナーを抜けるとヘアピンコーナーへ向かうが、その手前に高速の右ターンをクリアする。ハイダウンフォースマシンはアクセル全開のまま抜けるが、通常車両は手間でアクセルオフし慎重にクリアしてヘアピンカーブへの姿勢を最適化する必要がある。
ヘアピンカーブ自体は単調で低速だが、コース幅があるのでインサイドにCPを取らずともアウト側ラインで車速の高いままクリアする走法も現実的だ。ただ耐久レースなど長時間の走行後はタイヤカスなどのデブリがコーナーアウト側に多く散らばってくるので、そこに踏み入れるとそのままコースアウトしてしまいかねない。
ヘアピンの立ち上がり加速でトラクションを最大限有効に発揮させ車速を上げて行くことが続くスプーンコーナーへのアプローチ速度を高めるために重要だ。スプーンコーナー手前の高速右カーブは通称「松ちゃんコーナー」と呼ばれ、とくに2輪で走るには危険でテクニックが必要だ。4輪では全開で行けるクルマがバランスのいいクルマと評価できる場所で、タイヤのグリップが落ちてくると全開で行けなくなり性能変化に応じて対応が求められるのだ。
スプーンカーブは入り口が60R、出口に向け200Rで構成される複合コーナーだが、一つのコーナーとして捉え、立ち上がり重視でライン取りと車両姿勢をコントロールする。
スプーンコーナー出口での速度が続くバックストレートでの初速となるので、いかに高い速度で抜けられるかがポイントだ。トップフォーミュラだと4速全開200km/hオーバー、RRのポルシェ911なら入り口から出口までドリフトしっぱなしとなるなど車両特性の違いが大きく出る。
バックストレートは直線区間だが、初めは下り、中程から登り勾配がつき路面もバンピーだ。とくに最高速に達する立体交差上は構造的ダンプがあり、ここでサスペンションが底づきしたり跳ねたりしてダウンフォースが減少すると続く超高速130Rコーナーに大きな影響を与えてしまう。
130Rコーナーは鈴鹿で最も難易度の高い超高速コーナーとして知られ、F1ドライバーも手こずるほどの難しいコーナーだった。ただ近年は130Rとは名ばかりで、入り口こそ85Rと小さいものの、出口に向け340Rと大きなRに変化し、ほとんど直線的にアクセル全開で抜けられる形状に改修されていて走り易くなっている。
F1だと300km/hを超えるコーナリングスピードとなるので超ダイナミック。それだけにミスすると代償も大きく、イン巻きして内側ガードレールにクラッシュするとほとんどのクラス、マシンで全損になってしまうリスクの高いコーナーなのだ。
130Rを高速で駆け抜けたら、もっとも低速となるシケイン「日立オートモーティブシステムズシケイン(旧カシオトライアングル)」を迎える。このアプローチに於けるブレーキングゾーンはオーバーテイクポイントとして有効で、セナ・プロ事件を始め多くのアクシデントや名勝負を生み出してきた。そういえば僕自身もここで命を落としかねないアクシデントに見舞われたこともあった。
シケインを立ち上がったら、下り勾配の最終コーナーを加速しながら立ち上がる。ハイパワー車であるほどトラクションコントロールが難しく、またタイヤのグリップダウンも加速性能、旋回性能に大きく影響するポイントだ。
こうしてホームストレートへ戻り、最高速でまた1コーナーへと進入していくのだ。
世界的にも難しく、チャレンジングだがドライブしていて楽しいと高い評価を受けている鈴鹿サーキット。レーシングドライバーとしての高い資質が求められる攻略しがいのある名コースであるといえるのだ。