先代ユーザーは「便利で手放せない」の声! それでも新型ステップワゴンから「わくわくゲート」が消えたワケを開発者に直撃 (2/2ページ)

左右非対称のデザインに否定的な意見も

 ただその一方で、一部の人たち、とくに非ユーザーのなかには、どうしてもバックゲートに縦線が入るというデザイン、左右非対称の印象が馴染めない、好きになれないといった、否定的な声もあったと言います。これが昨今の販売現場の変化にも関係してくるところで、ステップワゴンを買ってもらうにはまず、インターネットなどの写真や動画で見て、「いいな」「見てみたいな」「乗ってみたいな」と思ってもらわなければならないわけです。お客さまに興味を持ってもらう第一関門とも言えるデザインで、敬遠されてしまうのはとてももったいないこと。それならば、デザインに影響しないような、ほかの方法で使い勝手を向上する方向で開発しよう、となったのが理由の1つだということでした。

 そしてもう1つは、重量の問題です。ミニバンはただでさえ、開口部が大きいことや背が高いことなどから、安全性や操縦安定性、燃費に関しては不利な要素が多いクルマです。じつは「わくわくゲート」をつけると、全体の車両重量に対してバックゲートの重さが占める割合が大きくなってしまうのが、懸念材料でした。重いということは、手動で開閉する際にお客様が苦労するだけでなく、開閉を支えるダンパーの耐久性などにも関わってきます。パワーバックドアを装着しようとすると、その動力などにも影響が出てくるでしょう。走りの面では、車体の剛性確保やハンドリング、乗り心地といったさまざまなところに影響します。今回は「わくわくゲート」の採用を見送ったことで、そうした走りの面での性能アップにも開発の自由度が増し、やりやすくなったとのことでした。

 また、これは開発者の皆さまは初耳だった方が多いようですが、カスタム市場にも影響があったという情報があります。「わくわくゲート」があると、リヤバンパーやスカート、スポイラーなどのカスタムパーツを製作する際のコストがグンと高くなってしまうため、パーツメーカーがなかなか手を出しにくくなってしまったという事情があるようなのです。ミニバンを自分好みにカスタムして乗るというユーザーも一定数いますが、先代ステップワゴンはそうしたカスタムベース車の候補として、選ばれにくくなっていたということでした。その点、新型はシンプルなフォルムなので、カスタムしたいと思わせる魅力が復活しているのではないかと感じます。

 いずれにしても、先代のユーザーはとても気に入ってくれていたのに、それを新型でなくしていいのかどうか、悩みに悩んだ末の苦渋の決断だったというお答え。でもそのぶん、新型では快適性も走行性能も乗り心地も、しっかり熟成されていて自信を持ってお届けできますと明言していました。写真や動画でも映えるデザインで、すでに独自の世界観にハマったという声も多い新型ステップワゴン。悩んだ甲斐あって、第一関門はしっかり突破しているのではないかと感じます。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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