カーデザイナーの巨匠がその地位をより後押しした
●個性的デザインを現代的に再解釈する
ふたり目は、ベルトーニが自身の後任としたロベール・オプロンの起用です。DSの後、マセラティの買収やロータリーエンジンの開発などによる混迷で、同社2度目の経営危機に陥っていたところ、1970年に送り出されたのがクーペの「SM」と小型セダンの「GS」です。
オプロンは、ベルトーニの個性を継承しつつも、「バロック的」だった表現を現代的に再解釈したといいます。
実際、SMとGSは傑作DSを基本としつつ、ボディ面はより洗練され、ランプなどのパーツ類も現代的となりました。そして、この再解釈がもっとも成功したのが、GSの後継となる「CX」です。
GSを範としつつ、クーペ調のより現代的なシルエット。徹底的に磨き込まれた面と美しいキャラクターライン、モダンなフロントライトと広く切り落とされたリヤパネルの組み合わせは、GSよりグッドデザインとするジャーナリストも多いほどです。
この現代的な再解釈があってこそ、次世代へのバトンタッチができたと言えるでしょう。
●カロッツェリアとの協業
3人目はもちろんマルチェロ・ガンディーニです。1982年発表の「BX」は、1980年代らしいシャープな造形を新たに採用した名作となりましたが、この出会いによってベルトーネとの関係が構築されたことも同社にとって大きな出来事でした。
そのベルトーネとの協業はCXの後継である1989年の「XM」、1991年の「ZX」、1993年の「エグザンティア」と続き、シトロエンの伝統を直線基調で再構成することに成功しました。
ベルトーネとの関係が終わると、シトロエンはしばらくの間混迷期に入ったように見えますが、そこへ再び明かりが見えたのが、2016年の3代目「C3」でしょうか。エアバンプを用いたカジュアルな佇まいは、前年にDSブランドと分離したことも功を奏したように思えます。
さて、冒頭の新しいC4に話を戻せば、GSへのオマージュは、かつての個性と新時代の造形の融合を模索し始めたとも言えそうです。
もちろん、ベルトーニやオプロン、ガンディーニのような天才による本質的な個性は早々再現できるものではありません。
それでも、2016年に発表された「CXPERIENCEコンセプト」で掲げた、「より独創的に、もっと楽しく」へのチャレンジは、いまも着々と進んでいると言えそうです。