ミニバンの時代が到来するとコンパクトカーも天井を高めに設定
そして1970年代のファミリーカーは、ブルーバードやコロナなどのミドルサイズセダンだ。1980年代に入って景気が良くなると、直列6気筒エンジンを搭載するマークII/チェイサー/クレスタなども好調に売れ始めた。
その後、1990年に初代エスティマ、1991年に初代バネットセレナが加わり、ミニバンも売れ行きを伸ばす。1996年には前述の初代ステップワゴンも登場して、ミニバンの時代が始まった。この影響でハッチバックボディのコンパクトカーも、クルマ作りが変わり、天井を高めに設定するようになった。
たとえば1995年に発売された6代目シビックのハッチバックは3ドアで、全高は1375mmだった。それが2000年に登場した7代目では、ハッチバックが5ドアになり、全高も1495mmに高めた。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2680mmに伸びて、居住空間を大幅に拡大している。
つまりクルマの価格が高まる時代が近付くと、車両開発における空間効率も向上して、コンパクトなボディで十分な室内空間を得られるようになった。
それでも7代目シビックは、車内が広いものの売れ行きは伸び悩み、シビックが国内販売を中断する切っ掛けになった。しかし2001年に登場した初代フィットは、人気車になっている。ミニバンのヒットで高い天井に対するユーザーの抵抗も薄れ、全高を1525mmまで高めた。全長は3830mmと短いが、大人4名が快適に乗車できる居住空間を備える。燃料タンクを前席の下に搭載して、荷室容量も広い。
しかも初代フィット価格は、売れ筋のAが114万5000円と割安だったから、2002年には国内販売の総合1位になった。
そして以降のコンパクトカーは、天井を高めて車内を広く確保するようになり、その一方でクルマは徐々に値上げを開始した。冒頭で述べた通り、フィットのような小さなクルマに乗り替えるユーザーが増えた。
つまり昨今のダウンサイジングは、クルマの値上げと空間効率の向上が並行して進んだことに基づく。その中心に位置するのがコンパクトカーであった。