この記事をまとめると
■EVへの採用が期待されているシステムにインホイールモーターがある
■しかしながら市販EVへの採用はいまだ実現していない
■将来的にEVが当たり前なるとインホイールモーターが必要不可欠になるかもしれない
車体構成の自由度が高まるインホイールモーター
インホールモーターとは、車輪のホイール内側の、通常はブレーキが取り付けられている場所にモーターを配置し、車輪を直接駆動する仕組みをいう。実車として広く知られるのは、清水浩が慶応義塾大学で製作したエリーカと名付けられた8輪EVだ。イタリアのテストコースで、時速370kmの最高速度を達成した。
インホイールモーターの利用は、EVらしさの象徴ともいえ、エンジン車ではなかなか実現の難しい車体構成に役立つとして期待された。しかし実際には、まだ市販EVとして登場していない。現在のEVは、エンジン車の代替という発想や、製造の仕方から転換できていないためだ。
理由は、商品性への制約というより、生産工場での製造に際し、EV専用の生産設備に的を絞るのが難しいせいだろう。現在は、エンジン車との混流のなかで製造できるEVとすることで、原価を抑え、消費者が購入しやすいEVを市場提供することが優先課題となっている。
その象徴といえるのが、最新の軽乗用EVである日産サクラと三菱eKクロスEVだろう。
エンジン車の軽自動車に近い価格帯での販売に漕ぎつけることができた。
一方で、三菱自は2009年のi-MiEV(三菱・イノベイティブ・エレクトリック・ヴィークル)発売を前に、インホイールモーターの試作車をつくり、性能試験を試みている。そして、ランサーエボリューションIXを基にしたランサーエボリューションMIEV(三菱・インホール・エレクトリック・ヴィークル)を製作し、EVのラリーイベントへの参加なども行った。
三菱自は、電子制御を採り入れた4輪駆動制御に積極的であり、4輪にインホイールモーターを装備することで、より自在で精緻な4輪駆動制御を研究していた。