4輪にも復活はあるが別のクルマとして登場する例が多い
軽自動車でいえば、1998年に「Z」を、1999年に「バモス」という360cc時代の名前を復活させたことがあった。しかし水中メガネの愛称で知られる初代Zが、いわゆるスポーツクーペ的なキャラ設定だったのに対して、復活したZはエンジンをミッドシップに積むことで衝突安全性を高め、なおかつ15インチのタイヤを履いたクロカン4WDという不思議キャラで、たまたま名前が同じという印象のほうが強い。
バモスにしても1970年に誕生した初代モデルはオープンボディのピックアップトラックという摩訶不思議なスタイルだったが、2代目のバモスは軽商用ベースの1BOXワゴンというものだった。やはり名前だけの復活でスタイリングは完全に別物。2輪のようなリバイバル系の商品企画ではなかった。
もっとも、屋根どころかドアも持たない初代バモスを現在の安全基準をクリアするように復活させることは困難なことは言うまでもない。その特性から2輪というのは衝突安全基準がないため、かつてのスタイルを踏襲できても4輪でそれをやるのは難しいという事情があるのは理解できなくもない。
余談だが、新生ダックスがディスクブレーキとなっているのは原付二種であってもABSの標準化が義務付けられていることの影響もあるはずだ。また最新の排ガス規制をクリアしつつ、十分な動力性能を確保することを考えると50ccではなく、125ccで復活させるのが適切と判断したという面もあるだろう。2輪であっても安全性能や環境性能を無視できるわけではなく、社会ニーズに合わせて仕上げているといえる。
それはさておき、ホンダの4輪でもリバイバル的スタイリングを持つモデルは存在している。ご存じのように、軽自動車のN-ONEはホンダの4輪事業の礎を築いたといえるN360をモチーフとしている。
初代N-ONEの誕生は2012年だったが、2020年にフルモデルチェンジした際も「タイムレスデザイン」をテーマに、アウターパネルのほとんどをそのままにしたことは4輪でもヘリテージを重視しているという証だろう。
また、ホンダの電気自動車「Honda e」についても、初代シビックなどホンダの歴史的モデルをモチーフにしたディテールが盛り込まれた内外装になっていることはよく知られている。けっして4輪のリバイバルデザインを否定しているわけではない。
それでも車名とスタイリングをセットでリバイバル商品として企画している2輪に比べると、4輪のそれは控えめなのは事実。とくに電動化時代には新興メーカーとの競争において「歴史がある」というのはホンダのようなメーカーにおける強みとなるはずだ。だからこそHonda eでは初代シビックをデザインモチーフとしたのだろうし、そうした流れは強化されていくと予想される。
それでも2輪における唯一無二のスタイリングを持つモンキーやダックスといったモデルを見ていると、4輪のほうでもっとわかりやすくヘリテージを盛り込んだモデルを期待したくなるものだ。