レジェンドも「みちびき」なくしては実現しなかった
とはいえ、軌道が斜めに傾いているので一機の人工衛星がずっと日本の真上に滞在するわけではなく、滞在できるのは7〜9時間程度。そのため、複数機を時間差で入れ替えることによって、つねに一機が日本の真上に滞在できるようにしています。「みちびき」は2010年に初号機が打ち上げられ、2017年に2号機、3号機、4号機が打ち上げられました。そして2018年から、4機体制でのサービスが開始されています。
「みちびき」はGPSからの即位情報を補うことができるだけでなく、独自に「サブメータ級即位補強サービス」「センチメータ級即位補強サービス」という補強信号を出しており、GPSだけでは難しかった車線レベルでの運転支援も実現。ハンドルから手を離したままでも自動で車線変更してくれる技術なども、「みちびき」によってさらに正確性が増している技術のひとつです。
そして何より、2021年3月に世界で初めてレベル3の自動運転技術を搭載して発売された量産車、ホンダ・レジェンドもこの「みちびき」なくしては実現しませんでした。米国自動車技術者協会が定める自動運転のレベルは0から5までの6段階あり、レベル2(ハンズオフ)までは、手足を離している状態でも安全確認などの監視はドライバーに任されていて、操縦の主体はあくまでドライバーと定義。それがレベル3からはドライバーが「アイズオフ」することが可能となるため、よそ見をすること許され、操縦の主体が「システム」に変わるのが最大の違いです。「みちびき」による精度の高い位置情報ともう1つ、道路の形状や障害物などが正確にデータ化された三次元地図がとくに重要な働きをすることによって、レベル3が実現しています。これからの時代には、高度な運転支援技術を搭載するクルマが増えてきますから、アリアのようにシャークアンテナが2つ備わるモデルも多くなるかもしれないですね。
また「みちびき」はクルマ以外の分野でもさまざまな新しい活用例があります。たとえば子供や高齢者の見守りサービス。無人配達機による荷物などの配達や、人手不足に悩む農業の分野でも、精度の高さを活かした無人トラクターによる田畑の耕作など。災害時の素早い情報提供や安否確認などにも活用されていきます。「みちびき」は今後さらに、私たちの暮らしに大きく貢献してくれることは間違いないですね。