この方式を発展させたのが、同じく三菱が1984年に実用化したシリウスDASH(Dual Action Super Head)3×2方式の可変バルブ機構だ。ターボ過給と組み合わせたSOHC3バルブ方式(吸気2/排気1)のエンジンで、低回転時には吸気1/排気1で運転し、高回転時に休止させていたもう1つの吸気バルブを作動させ、吸排気流の高効率化、充填効率の向上を図ることで高出力化を図った可変バルブ機構である。搭載モデルはスタリオン、ギャランΣ(E15A系)だったが、4バルブDOHCターボ全盛の時期で、市場で強く注目されることはなかった。
低速域と高速域で、理想とするバルブ開閉タイミングに異なりがあることに着目し、低速域と高速域でバルブ開閉タイミングを変えられるようにした位相可変型バルブタイミング方式が、1986年に日産が実用化したNVCS(Nissan Valve timing Control System)だった。3リッターV6DOHCのVG30DE(F31レパード)に採用。量産エンジンの高性能化を急テンポで展開しつつあった日産が、自然吸気3リッターエンジンの最高レベルを目指して商品化したものだった。
高出力化に対し、バルブ開閉タイミングのみではなく、バルブリフト量も可変にしたシステムが1989年にホンダがリリースしたVTEC(Variable valve Timing and lift Electronic Control)だ。最適なバルブリフト量も低速域と高速域では異なり、ひとつのカム山で対応できる回転ゾーンに限界があることから、ホンダは低速時(浅く開く)と高速時(深く開く)でカム山を切り替えれば、幅広いエンジン回転域で高出力性(高トルク性)が得られると考えた。このエンジンがB16A型でDA型インテグラに搭載され、1595ccの排気量から160馬力を発生。自然吸気エンジンながらリッター100馬力を達成する驚異の仕様だった。