この記事をまとめると
■トヨタとGMが共同開発したSUVがあった
■6速MTが用意されるなどといった意欲作であったが販売状況は芳しくなかった
■たった2年に満たない間に販売が終了してしまった珍車とも言える
トヨタがGMと手を組んで作った異端児
今でこそ各メーカーがこぞってリリースしているクロスオーバーSUV。乱暴な言い方をしてしまえば、出せば売れる状態と言っても過言ではないかもしれないが、今からわずか20年前にあのトヨタとGMが共同開発してリリースしたにもかかわらず、鳴かず飛ばずでわずか2年弱で姿を消してしまった車種がある。
それが今回ご紹介する「トヨタ ヴォルツ」である。
90年代後半に日米貿易摩擦解消のためにトヨタがGMからキャバリエを輸入販売していたが、残念ながらこちらの販売は芳しくなかったため開発段階から両社が共同で開発をしたもので、生産もアメリカ・カリフォルニア州にあった両社の合弁会社であるMUMMIで行われており、日本仕様も輸入車という扱いになっていたのだ。
共同開発ではあるものの、プラットフォームはトヨタのカローラシリーズなどに採用されていたMCプラットフォームとなっており、搭載されるエンジンもトヨタの直列4気筒1.8リッターの1ZZ型及び2ZZ型エンジンが採用されていた。
※画像はセリカの2ZZエンジン
ちなみに「Z」グレードに搭載された2ZZ-GE型エンジンは同時期のセリカやカローラシリーズのホットモデルに搭載されたものと同じ190馬力を発生させるもので、このグレードのみ4速ATのほか、6速MTも選択することができたのだった。
なおこのモデル、アメリカではGMが当時展開していたポンティアックブランドから「ヴァイブ」という車名で販売されており、日本で販売されていたヴォルツはこのヴァイブをベースにエンブレム類などをトヨタに置き換えた仕様となっていた。
ここでややこしいのが、アメリカのトヨタで販売されていたヴァイブの兄弟車はヴォルツではなく「マトリックス」というまったく異なるエクステリアを持った車種だったことだ。
兄弟車であるからメカニズムや内装などはヴァイブ(ヴォルツ)と共通であるものの、マトリックスは正式名称が「カローラマトリックス」であることからもわかるように当時のカローラシリーズと共通するデザインテイストとなっており、日本の2代目カローラスパシオに近いルックスとなっていた。
もしかしたら差別化を果たすためにポンティアック顔のデザインを採用したのかもしれないが、そのアクの強いルックスが販売不振の一端を担ったのだとすれば皮肉なものである。
ちなみに日本での販売期間は1年9月ほどと短命に終わったヴォルツではあるが、デビュー1年後の2003年8月に一部改良がなされており、ツートンカラーの廃止やボディカラーの入れ替えなどが実施されていた。