いまや舗装路でも4WDの優位性が認められている
500〜600馬力といったハイパワーが当たり前となった現代のスーパーカーも、その多くは4WDシステムを採用している。ランボルギーニは全モデルで4WDをメインに車種展開しており、またフェラーリも4WD化を進めている。メルセデスAMGも4WDが主流となっているし、ポルシェも同様の傾向にある。4WD化することでトラクション性能が2WDの2倍となり、ハイパワー化した現在の動力性能を担保するには4WD化は不可避となっているのだ。
ただ、サーキットでのレースを闘うモータースポーツのカテゴリーでは、4WDは余りに高性能過ぎて禁止されてしまっている。そのため、スーパーカーメーカーもレース車のベースモデルとして2WDを残している。
では、より一般ユーザーにとって身近な乗用車ではどうだろう。やはり4WDの効果は大きく、多くのモデルが採用している。しかし、非降雪地域の乗用車としては2WDが主に選択されている。完走舗装路の操縦安定性、ウエット路面での安定性、緊急回避などの操縦性などあらゆる場面で4WDは優れた走行特性を示すことがわかっているが、それでも2WDを好むユーザーが実際は多い。
コンパクトカークラスでもFFの2WDモデルを4WD化すればプロペラシャフトやリヤデファレンシャルの追加装備が必要だ。加えてセンターデフやトランスファーシステムも必要。さらに電子制御のプログラムの適合など大きな手間がかかってくる。重量にすればヤリスHV(ハイブリッド)で90kgの増加。価格も20万円ほど高くなる。軽自動車のホンダN-BOXでも60kgの重量増加と15万円程度の価格上昇を伴ってしまう。それでも寒冷地、降雪地域では生活必需品として、また安全安心の保険として4WDが積極的に求められている。
重量が重くなることで、燃費数値が悪化することはあるが、実用的に問題となるレベルとは言えない。駆動力が有効に発揮されることを考えれば、通年レベルでの燃費はむしろ向上しているかもしれない。また、重量増加は運動性能にも影響を与えるが、その増加分は主に車体フロア下で低重心化に貢献する。発進・旋回加速場面では4WDがより有利である。総合的に考えれば4WDが標準化される意義は十分にあると言えるのだ。
実際、電動化が進み、より低速トルクが高まり、4輪駆動力制御が高度化すれば4WDが当たり前になってくるだろう。今は、そうした面でも過渡期にあるといえるのだ。