この記事をまとめると
■自動車用語におけるLSDはリミテッドスリップデフを意味する
■オープンデフで事足りるため、多くのクルマには採用されていない
■LSDの詳細や採用されるクルマの特徴について解説する
ほとんどのクルマがLSDを採用していない
昔、筆者が大学生だった頃、当時の愛車ポンコツTE71レビンに、中古で入手したLSDを組んだことがあった。「これでドリフトができるぞ」と喜んで、翌日大学に行き、友人(クルマには詳しくない)にそのことを報告した。
「昨日、ついにLSDを入手したぜ」「LSD? それって大丈夫?」「大丈夫、大丈夫。かなり効いて、ご機嫌だよ」「絶句(ヤクをキメる、やばいヤツかも)」という、コミュニケーショントラブルが……。
筆者が愛車に入れたのは、もちろん合成麻薬(幻覚剤)のLSDではなく、リミテッドスリップデフのLSD。
リミテッドスリップデフという名称通り、LSDはデフの一種。
クルマがコーナリングするとき、内輪と外輪は旋回半径が、少なくともトレッドの幅分違うので、スムースに曲がるためには左右輪で回転差が必要になる。
その回転差を駆動輪に設けるために用意されたのが「差動装置」=デファレンシャルギヤ。
このデフさえ入っていれば、普通に走るし、普通に曲がるし、普通に止まるので問題なし。
普通のクルマには普通のデフ=オープンデフさえついていればOKなので、LSDなどとくに必要ない。したがって、ほとんどのクルマにはLSDなど入っていないというわけだ。
ただしこのデフ、ただのデフ=オープンデフだとごく稀に困ったことになることも……。
それはオープンデフの機構上、駆動輪の片側が空転すると、その反対のタイヤに駆動力が伝わらないという問題があるからだ。
ぬかるみや悪路、雪道などを走る軽トラックやSUVだと、このオープンデフの特性が仇となり、走破性をスポイルすることになる。