この記事をまとめると
■タイヤサイズが数種類用意されているクルマがある
■その理由やどれを選ぶのがベストなのかを解説
■トヨタ・アルファードやホンダeなどを例に挙げた
タイヤサイズによって走行性能が大きく異なることは少ない
1台のクルマでタイヤサイズが数種類用意されていることがある。が、じつは新車の開発時には、設計基準となるタイヤサイズがあり、それを基本に足まわりなどのセッティングを煮詰めていくわけだ。当然、テスト走行もその設計基準のタイヤで行う距離が一番多くなる理屈だ。
しかし、設計基準タイヤが17インチだとして、ベースグレード用には、コスト的にも有利な1ランク下の16インチを履かせ、さらに見栄えが良く、スポーティな走行感覚も得られる、設計基準タイヤより1ランク上の18インチを用意するような車種もある。本当は、タイヤサイズは1種類のほうが、走行性能を煮詰めやすいのだが、営業的にはそうもいかないのが実情なのである。
とはいえ、トヨタ86(初代)の開発責任者の多田さんが、開発を行った初代トヨタ・ラクティスは、サーキット走行を楽しめる走行性能、サーキット用のタイヤを積み込めるラゲッジスペースの確保といった、走り好きの多田さんならではのエッセンスが詰め込まれたコンパクトカーで、当時としては画期的な全車175/60R16サイズの大径タイヤを履いていたのが大きな特徴だった。当時の多田さんへの取材メモを紐解けば、やはり「タイヤが1サイズのほうが、走りを追求しやすい」というのが、贅沢な16インチ、1サイズのタイヤチョイスだったのである。
もっとも、最近のクルマはボディやサスペンションの取り付け部がとてもしっかりしていて、タイヤサイズによって走行性能が大きく異なるようなことはまずない。ただし、である。車種によっては走りのキャラクター、乗り心地がタイヤサイズによって微妙に違う車種も、あるにはある。
たとえば、国産ハイエンドミニバン、トヨタ最上級乗用ミニバンであり、VIP需要も多いトヨタ・アルファードを例に挙げると、タイヤサイズはベースグレードのXの16インチから、中間グレードの17インチ、ガソリン車のハイグレード専用の18インチの3種類が用意されている。
そのアルファードがデビューした当時、開発陣の設計基準タイヤを聞いてみると、やはりというか、中間の17インチとのこと。ハイエンドミニバンに相応しい乗り心地や操縦性、安定感のすべての項目をバランスよくまとめられているベストバランスなタイヤサイズと言っていい。2018年のビッグMCを機に加わった、VIPユーザーの要望に応えた、MC前にはなかった最上級のエグゼクティブラウンジのエアロ仕様に、同ガソリン車の操安性重視となる18インチではなく、17インチタイヤをあえて装着しているのも、ベストサイズタイヤの証明と言っていいだろう。
当然、18インチタイヤのほうが乗り心地面、とくに荒れた路面での快適性では不利になるものの、3.5リッター、2.5リッターのガソリン車のエアログレードでは、大径タイヤ&ホイールの見映えを含め、よりカッコよく、似合うと感じる人は少なくないはずだ。