この記事をまとめると
■モーターはトルクレンジが広いため多くのEVは変速機を持たないが減速機は装備している
■200km/hで走行することを想定した場合にはEVであっても変速機があるほうが効率的
■モーターやバッテリーの発熱で出力が制御されるためEVも液体冷却装備が一般的になった
変速機を持たないEVでも減速機は備えている
電気自動車(EV)は、モーターが低速から大きなトルクを発生する特性のため、変速機を持たなくても、市街地から高速道路まで走らせることができる。ただし、よりトルクを増大させるための減速機は装備する。モーターがいくら大トルクを出せるといっても、車両重量が1~2トンにおよぶクルマを動かすには、より大きな力が必要で、そのために歯車の大小の組み合わせによってトルクを増大するのだ。
減速機という言葉が意味するように、力を増大することはできても、逆に速度は落すことになるので、高速域になるとモーターの許容回転数に近づいていくことになる。
そこで、GTカーやスポーツカーのように、時速200km以上で走行することも視野に入れた場合は、変速機が必要になる。ただし、エンジンよりモーターは速度域の幅が広いので、2段変速程度で十分ではないか。ポルシェのタイカンでも、上下2段変速だ。
モーターといえども、高回転で回し続ければ、大電流が流れ続けるため加熱する。そこで、高速域でのモーター回転数を下げる目的で、ギヤ比の差の小さな組み合わせへ変速するのだ。当然、モーターも冷却は行っているが、効率のよい回転数で使い、発熱は避けた方がいい。
エンジンほど高温ではないが、モーターやバッテリーも、熱は大敵だ。そのため、加熱しだすと出力を制御するプログラムが組み込まれている。それが作動してしまえば、GTカーやスポーツカーといえども加速が鈍くなったり、速度を下げざるを得なくなったりして、醍醐味を損なってしまう。
冷却に関しては、バッテリーに液体冷却を備えるのが一般的になってきた。これにより、加減速が繰り返されたり、高速で走行し続けたりしても、バッテリー温度を上げ過ぎないようにする。充電でも熱は発生するので、適正温度での充電を行う上でも冷却性能は重要だ。
モーターもバッテリーも、適正な温度管理の下で使えば効率よく、快適に利用できる。また、それを自動的に管理するうえで、制御技術の優劣が左右する。変速機も温度管理も、制御を活かして自動で行うことにより、モーター特有の力強く滑らかで静かな加速を満喫できるのである。