使い勝手最優先からエンタメ性最優先まで、インパネは個性豊か
シトロエン・C4ピカソ
現代ではスタンダードとなったスペースユーティリティの追求も、ケチで有名なフランス人が納得するデザインとなると、やっぱりシトロエンにたどり着いてしまいます。ファミリーカーの傑作として知られるC4ピカソは「せっかくだったら景色も見られるだけ見たい」的な要望に応え、室内から見晴らす可視エリア(フロントスクリーン)の最大化に加え、ルーフトップすらガラス張りという徹底ぶり。
その結果、室内はサンルームのような陽射しにあふれ、バカンス好きな同国人からバカ受け! ちなみに、スピードメーターは赤い針がセンタリングされ、デジタル表示が左右に動くボビンメーター風デザインも憎たらしいほどオシャレ。レガシー(遺産)に不自由しないメーカーは、こういうところ羨ましいですよね。
いすゞ ピアッツァ
日本でもバブル黎明期にはイカしたデザインのクルマがいくつもデビューしました。いすゞが117クーペに続いてジウジアーロにデザインを依頼したピアッツァもそんな1台。1981年当時、デジタルメーターやステアリング周辺にスイッチを機能的に配置したサテライトデザインはスタイリッシュなボディワーク以上の評判だったかと。
現代の基準で見ればゲームボーイ並みの液晶なんですが、ニードル式アナログメーターに慣れたドライバーの目には「異世界」だったに違いありません。加えて、ステアリング左右のスイッチユニットに位置の調整機構がついているため「ステアリングから手を放すことなく操作可能」という宣伝文句どおり、じつに使いやすかったことも忘れられません。
なお、ドイツのチューナー「イルムシャー」がチューンしたバージョンでは、モモのステアリングやレカロシートなど、当時のお約束パーツがおごられていましたっけ。
BMW i3
いつの頃からか、車内に「タブレット置いてあるの?」と思うとそれが多機能液晶モニターだったりすることが増えてきました。おそらくは、このi3やテスラが先鞭をつけたのではないでしょうか。
もっとも、BMWのiコンセプト(シリーズ)は「カーボンニュートラル」や「サステナブル」といったクルマ好きには馴染みの薄いワードが山盛りで、これまた「転生したらクルマがSDGsとやらに浸食されていた」とかなんとか奇妙なテイストが味わえる仕上がりです。
デザインや使い勝手は現在でもトップクラスですが、特筆すべきはペットボトルのリサイクル材やらユーカリ、ケナフ(麻の一種)を多用しており、クルマ好きはもとより「環境保護」好きにグッとくるところかと。
テスラ・モデル3
テスラはいずれのモデルも「未来」を感じさせるインテリアで定評あるメーカーですが、モデル3に至ってはもはや未来を通り過ぎて文字どおりの異世界、マルチバースといっても過言ではないでしょう。
なにしろ、ご覧の通り大型モニターがセンターにデンと構えているだけの室内はシンプルというよりも、むしろ「ラウンジ」感マックス。たとえば、自動運転に身を任せつつ行き先の天気をチェックしたり、あるいはリモートワークに精を出すかのようなイメージが膨らみます。
もっとも、アナログメーターや各種スイッチ、ダイヤルなどを装備するよりも液晶モニターのほうがはるかにコストダウンできると聞くと、未来感もなにやら生臭くなってくる気がします。