技術の進化により直6が復権する可能性もある
全盛期だった1980年代、ツインカム24バルブという1気筒あたり4バルブ化された直6が注目され、実際その回転フィールは素晴らしかった。シャープに吹き上がるが振動がなく、スムースにまわる。だが、パワーアップするには排気量を拡大するか、ターボチャージャーなどの過給器を装着して低・中速回転域でのトルク特性を向上するしかない。ターボチャージャーは3気筒にひとつ装着すると効率が高まり、直6はツインターボ化を求められる。当然、重量はさらに増し、コストも高まる。スペース効率も悪化し、縦置きエンジンレイアウトの高額なスポーティカーに需要は狭められていくのである。
しかし、ここ数年、直6復活の傾向が現れているのも事実。トヨタはGRスープラにBMW製の直6ターボエンジンを搭載して高性能スポーツカーとして復活させた。また、レンジローバーはディフェンダーに直6ディーゼルエンジン+ターボ+MHEV(マイルドハイブリッド)を新規に開発して搭載。マツダもラージ商品群として直6ディーゼルターボやMHEV搭載モデルを発売するとアナウンスした。
技術の進歩で直6エンジンをコンパクトに設計することができ、軽量化も図れるようになった。一方、衝突安全や機能追求から年々大きくなって行く車体に対し、ダウンサイジングの小排気量エンジンではかえって効率が向上しないことも明らかにされた。マツダはむしろ大きな排気量で低速回転域でのトルク特性を引き出し、トルクピックアップに優れるエンジン特性で仕上げたほうが、実用燃費は向上するという結論に到達したという。
GRスープラが搭載するスポーツ性追求の直6とは着目点が異なるが、燃費向上策としても直6が見直されつつあるのは喜ばしいことだろう。直6をバランス良く搭載するために縦置きレイアウトも見直され、幅広いバリエーションが展開されようとしている。
燃料自体もガソリンからバイオフューエルやeフューエル、水素など、エネルギー密度の小さいものへの置換が進むかもしれず、大排気量化でトルクを引き出す必要も生じるかもしれない。そうした先を見据えた取り組みも直6復活から読み取れるのだ。
そういえば、かつてホンダには1000ccの直6エンジンを搭載したCBX1000というオートバイもあった。インライン(直)4も魅力だったがインライン6のスムースでダイナミックな乗り味を知ったら、現代のバイカー達も感動するだろう。