アルファロメオの革命児もピニンファリーナがかかわっていた
・抜群の3ボックスプロポーション
フェラーリのようなスポーツカー、スーパーカーの一方で、ハッチバックやセダンといった実用車のデザインもピニンファリーナ・デザインの見所である。とくに提携関係のあったプジョーでの仕事は魅力的で、「205」「405」「306」など、いずれもファンが多い。
中でも、ダビデ・アルカンジェリの手になる「406クーペ」は、その流麗さからベストと評されることが多い。プジョーの社内デザインを基本とするセダンに対し、外板パネルを専用設計としたクーペは、ピニンファリーナ最後のプジョー車として、生産自体が同社内で行われた点もまた人気の理由だ。
ただ、ここではより実用的なセダンとして、もうひとつの才能に注目したい。それは、アルファロメオ「164」である。
デザインは、同社の「GTV」「スパイダー」という極めて個性的なクルマを手掛けたエンリコ・フミア。4社共同の一括プロジェクトとして開発された164は、フィアット「クロマ」、ランチア「テーマ」、サーブ「9000」とプラットホームを同一とする兄弟車だ。
しかし、164はこのなかでも格段に上品かつ端正であり、同時にスポーティでもある。3ボックスセダンとして極めてバランスのとれたプロポーション、プレスドアによる骨太の面構成、ボディのアクセントとなる彫りの深いキャラクターラインを持つ。「FFの大型セダンなどアルファロメオじゃない」というファンの声は、このスタイルを前に消え去ったと言われている。
ピニンファリーナでは、このエンリコ・フミアも含め、担当したデザイナーの名前を公表しているのが興味深い。チームワークであるカーデザインでは、ひとりのデザイナーを特定するのは難しいとされるが、可能な限りオープンにする、その姿勢も同社を魅力的にしている要素なのである。