この記事をまとめると
■ピニンファリーナが手掛けたクルマのベストデザインを考える
■フェラーリとは切っても切り離せない縁
■アルファロメオやプジョーにも深く関わっていた
名門「ピニンファリーナ」の手掛けたクルマを振り返る
1930年、ジョバンニ・バティスタ・ファリーナによって設立されたピニンファリーナ社は、イタリア最大のカッロッツェリアであり、代々一族によって発展してきた歴史ある企業である(現在はインドのマヒンドラグループ傘下)。
ピニンファリーナによるデザインの特徴は、虚飾を廃した機能的な発想を基本としながら、たとえばジョルジョト・ジウジアーロとはテイストの異なる「優雅な美」を感じさせるところだろう。
また、もうひとつの大きな特徴はフェラーリとの関係だ。1951年のバティスタとエンツォ・フェラーリとの出会いを機にする提携関係は、ご存じのとおり、その後長きに渡って両社の発展に寄与してきた。そこで、今回はフェラーリとそれ以外のクルマから各々1台をベストとして挙げてみたい。
・もはや神がかった美しさ
まずはフェラーリ。1950年代からの長い歴史には何台もの名作が存在し、たとえば1968年の「デイトナ」や1984年の「テスタロッサ」、1987年の「F40」など、それぞれをベストに挙げるファンは多い。その中で、これこそピニンファリーナの最高傑作だとされるのが、1969年の「ディーノ」である。
市販フェラーリ初のV6ミッドシップとして登場した同車は、左右の盛り上がったフロントフェンダーや、ボディサイドのエアインテークへ向けた流麗な面による抑揚、大きく湾曲したリヤライトなどの要素が、完璧なプロポーションのなかで構成されている。その美しく繊細な佇まいは、ちょっと神がかっているのでは? と思えるほどだ。
エンツォ・フェラーリの長男の名前をブランドとしたディーノは、正統なフェラーリではないという声を受けながらも、アルド・ブロヴァローネとレオナルド・フィオラヴァンティによる渾身のスタイリングは、そうした雑音を吹き飛ばすほどの魅力を放っていたのである。
さらに後年、現副会長のロレンツァ・ピニンファリーナへのインタビューでは、祖父であるバティスタが生前もっとも気に入っていたクルマとしてこのディーノを挙げており、実際、晩年は長くこのクルマに乗っていたという。ディーノには、美しさとともにこうした逸話、ストーリーが独自の存在感を創っているのである。