【試乗】歩く代わりにC+walk T! 街乗り特化のC+pod! トヨタの次世代EVをガッツリ試した (2/4ページ)

静粛性や制御はもう少し煮詰めてほしい

 さてこの『シーポッド』に実際に乗ってみる。ドアを開けると非常に狭い室内空間だが、大人2人は充分に乗るスペースがある。ダッシュボードのデザインは普通乗用車のように立派な作りがなされていて、新世代のモビリティとして特別に意識するようなことはなく、すんなりとドライビングポジションにつくことができる。こうした未来感のある乗り物なのだが、面白いことにシステムの駆動はキーをひねって行う、今やクラシカルとなった方式を採用している。それはコストダウンやシステムの安全性など総合的に高めるための方策だという。

 ダッシュボードを見るとエアコンのスイッチに加えシートヒーターのスイッチが備えられている。左右両シート共にシートヒーターが備えられているのだが、じつはこのクルマにはヒーターが装備されていない。それは寒い冬でもシートヒーターで身体を温め、ヒーターを備えないことによって電力消費量を抑えこむことを狙っているのだ。電動ヒーターはものすごく電力を消費するので、エンジンを搭載するハイブリッドなどではエンジンの熱で暖房することができるが、電動車では常に暖房による電力消費が問題となっている。この『シーポッド』ではそこを割り切り、あくまで市街地でのモビリティ、短距離での走行ということでシートヒーターのみで対応するという手法を取っている。

 実際のところ室内は狭いので、もし冬季にコートやダウンジャケットなどを着込んで荷物を持って乗り込んだ場合、そうしたものを収容するスペースが充分にあるとは言えず、シートヒーターで着衣したまま移動できれば雨風はしのげるので充分と言えるのも理解できるところだ。だが、クーラーに関してはエアコンにより室内を快適な温度に保つようになっている。炎天下での駐車などで車内温度は50度に達することもあり、そこはさすがに窓を全開放しても暑さをしのぐことができないのでクーラーは電動式のコンプレッサー方式を採用しているというわけだ。

 トランスミッションがないのでギアセレクターはなく、発進をするにはDレンジのボタンを押してアクセルを踏むと発進することができる。ちなみにパーキングスイッチはなく、備えられているのはリバース、ニュートラル、Dレンジの3つのボタンのみである。

 システムを起動して走り出すとゆっくりとスムースに動き出す。ただその走行感覚はすでに販売状況にあるさまざまなEV乗用車と比べて、少しばかり動きが雑に感じられる部分がある。アクセルに対するトルクの立ち上がりや加減速の制御なども緻密さには欠けていて、遊園地の電動車に乗っているような感覚になる。ひとつには遮音や吸音材などが省かれ、電動モーターの駆動音や減速時の回生音、またエアコンを入れるとエアコンのコンプレッサーノイズなどが非常に大きく室内に入ってきて騒々しいのである。

 シティコミューターとして特別な立ち位置にあり、最高速度は60km/hと制限されているため、高速道路への乗り入れはできずETCも装備していない。あくまで市街地を移動するためのひとつの手段としての提案と言えるわけだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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