ポルシェは最初から電動+4WDだった! 【清水和夫ポルシェを語るVol.1】 (2/2ページ)

ポルシェはアルプスが生んだ電動四輪駆動車から始まった

 本題に戻ることにするが、ポルシェの電動化の歴史は1900年のパリ博覧会まで遡る。皆さんも知っていると思うが、若きポルシェ博士が最初に自動車を作ったのはオーストリアのローナー社。この時代、ガソリン車はまだ普及しておらず、むしろ電気自動車のほうが実用的であった。ポルシェ博士が目をつけたのは、インホイールモーターを持つシリーズ型ハイブリッドであった。そのプロトタイプを作りなんと28才の若さで1900年のパリ博覧会に展示した。

 このプロトタイプは当初は二輪駆動だったが、実用性を考えて四輪駆動に進化している。当時は道路のインフラも整っていないので、雨が降ると泥沼と化すアルプスの道は四輪駆動車でないと登れなかったという事情もあった。この1900年に公開されたローナー・ポルシェこそ、ポルシェの電動化と四輪駆動の原点だったのだ。

 2012年11月。すっかりと冬を感じさせるヨーロッパアルプスは冬支度に忙しかった。タイヤをウインタータイヤに履き替え、キリスト教徒にとってもっとも大切なクリスマに向けた準備が進んでいる。アルプスの東の麓にあるオーストリアのグラーツで、新型ポルシェ・カレラ4の国際試乗会が開催されていた。

 なぜこの季節にこの地域でカレラ4の試乗会が行われたのか、その答えは明快だ。リアルスポーツカーとして知られるポルシェ911カレラは、昔から全天候型スポーツカーを目指し、911シリーズのカレラ4は1983年に登場したポルシェ959に由来している。

 ポルシェ959といえば、FAIグループBカテゴリーで開発された四輪駆動のスーパーカーであるが、その駆動システムは1980年に登場したアウディ・クワトロの技術を共有している。

 実際には市販されなかったが、ポルシェ911シリーズの四輪駆動は1980年ごろにもプロトタイプとして公開されている。つまり、同じ時期に世にでたのが、アウディ・クワトロであったが、四輪駆動システムはポルシェとアウディが協力して開発していた。その裏にはポルシェ社からアウディへ移籍したフェルディナント・ポルシェ博士の直系の孫にあたるフェルディナント・ピエヒ氏の存在が大きかったわけだ。それでは、どのようにしてポルシェとアウディが技術を共有するのだろうか。次回はその辺りをじっくりと考察してみたい。


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