F1のノウハウが注がれているがアルカナにその過激さはない
広報資料によると、ルノーF1で収集したノウハウが注がれているという。確かにF1は、内燃機関と電気モーターを併用するハイブリッドマシンで戦われる。瞬間的なピークパワーと効率の良い回生力をバランス良く連携しながら、あの地上最速のバトルが展開される。そこで得た技術が、市街地走行に置き換えられているというのだ。
ただし、F1のイメージから想像する過激なスポーツフィールではない。モータースポーツで鍛え上げたドッグクラッチATが組み込まれているとはいえ、それを実感する瞬間はない。回生ブレーキをコントロールするパドルは備わっておらず、したがって、回転の上げ下げを楽しむ術がないのである。
ドライブモードをスポーツにアジャストすれば、次の加速に備えて回転が高まる。ゆえに、初期からリズミカルな加減速が味わえる。だが、純粋にワインディングを楽しむためのスポーツSUVではない。ドライバーが走りを楽しむ仕掛けは備わっていないのだ。
ハンドリングも落ち着いている。ボディは1470kgと決して軽くはないものの、深くロールすることもなくピッチングも抑えられている。フラットライドをキープしているから、重量を持て余すような荒々しさは皆無だ。だが、ワインディングを軽快に駆け回りたくなるような素振りはない。都会的なスタイリッシュSUVなのである。
ルノーの名を耳にして真っ先にイメージするのは過激なスポーツ性能である。F1での活躍だけではなく、メガーヌR.S.スポーツRでニュルブルクリンク市販車FF最速を狙うような獰猛な魂を感じる。だが、アルカナにはその過激さはない。むしろ、モータースポーツで蓄えた技術をオブラートに包み込み、潜在的な性能として奥ゆかしく隠し持っている感覚である。
都会的SUVが間違いと言うならば、摩天楼からハイウェイまで……。アルカナの守備範囲はそこにある。