4座全部がバカッと開く! エンジンフードが左右跳ね上げ! マニアでも知らないガルウイングなクルマ5選 (2/2ページ)

市販モデルにもガルウイングなレアモデルあり

3)デ・トマソ・マングスタ

 フェラーリvsフォードという名作映画がありましたが、キャロル・シェルビーがデ・トマソの社長、アレハンドロと仲違いさえしていなければ、GT40の代わりにこのマングスタがフェラーリをやっつけていかもしれません。なにせ、アレハンドロの嫁はんはフォード一族、マングスタもパンテーラもフォード製V8エンジンをお友達価格で譲られていたくらいですし。

 で、ジョルジェット・ジウジアーロ率いるカロッツェリア・ギアは、リヤのエンジンフードを左右2分割のガルウィング状にデザインしました。縦置きされたV8エンジンの左右からアプローチ可能、などのエクスキューズもできるでしょうが「だったら最初から一体型フードにすればいいじゃん」は開発陣の前ではいってはいけないNGワード。気性の荒いアルゼンチン出身の元F1ドライバー、アレハンドロが聞いたら正拳のひとつくらいお見舞いされたことでしょう。

 なにしろ、フォード首脳陣はこのガルウィングフードをいたくお気に入りだったそうですから。おかげでマングスタは400台もの売れ行きで、引き続きフォードのサポートを得たアレハンドロは大ヒット作、パンテーラを製作することができたのです。

4)ブルックリンSV-1

 1974年に北米で発売されたブルックリンSV-1。ネットで検索すれば、マニアックなモデルながら数多くヒットします。マルコム・ブルックリンというビジネスマンが興したメーカーで、リリースはこの1モデルのみ。ガルウィングドアを採用していますが、その重さが片方で約40kgというかなりな重さ。それゆえ、電動で開閉する機構が用いられていたそうですが、これがよく壊れたそうです。その際はリヤハッチから出入りしないとならないらしく、ちょっとしたコメディのような場面。

 車名のSVはSafty Vehicle(安全なクルマ)との意味が込められているそうで、当時の安全基準で定められたマイルバンパーよりはるかに丈夫そうなバンパーを装備しているわりに地雷を踏んでしまったようです。

 もっとも、北米だけでなく、少数ながら日本国内にも輸入された模様。デロリアン同様、その生存車体は想像よりも多いかもしれません。公式には2854台が製造されており、デロリアン(9000台程度)より少ないにも関わらず、健闘しているといわざるをえません。前出のイタリアン・カロッツェリアのモデルに比べて、アメリカン・テイストというか、ゆるさもある独特なスタイルが熱烈なファンを引き寄せているのでしょう。

5)グンペルト・アポロ

 元アウディのレーシング部門「アウディ・シュポルト」を率いたトップエンジニア、ローラント・グンペルトが創設したグンペルト・シュポルトワーゲン。ここが作った野趣あふれるスーパーカーがアポロです。宇宙船をイメージしたデザインから、ローマ神話に出てくる「アポロ=太陽の神」に紐づけたネーミングは、宇宙ロケット時代に少年期を過ごした大人たちから支持をうけたことでしょう。

 ガルウィングドアは300SLと同じく、深くゴツいサイドシル(というか、もはやポンツーンです)をクリアするための必然的機能に端を発しているもの。つまり「飾りじゃないのよ」ということ。ボディパネルにはカーボンを多用していることから、(動画を見る限り)ドア自体も軽そうで開閉もスムース。このあたり、ドイツ人によるドイツらしい堅実さが垣間見え、イタリアン・カロッツェリアのモデルやアメリカン・ガルウイングとは一線を画しているかと。なお、グンペルトは現在、グンペルト・アイウェイ・オートモビルを主宰し、EVや水素エンジン車を開発しています。

 ガルウィングはクルマが逆さまになる事故などの際、救助に時間がかかるなどの弱点もあるため、グンペルトはドイツ人エンジニアらしい合理性でもって採用しなかったのかもしれませんね。

 アポロと矛盾するようですが、こちらは生粋のスーパーカーで命知らずのドライバー向け。「宇宙船なんだから、カッコよければいいのだ!」と、これまた蛮勇で知られるバルバロッサを祖にもつドイツ人らしい割り切り、かもしれませんね。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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