この記事をまとめると
■1980年後半から1990年代初頭の好景気をバブル景気と呼ぶ
■クルマもバブル景気の影響を大いに受けていた
■当時のエピソードを解説する
F40はオークションで2億円の値をつけた!
1980年後半から1990年代初頭の日本における異常とも言える好景気が「バブル景気」だ。日経平均株価が過去最高を記録し、経済が拡大。地価もまた高騰し、資産価値のバブル化が到来したのである。中堅会社に入社間もない20代で年間ボーナス200万越え、バイト月給が40万円、新入社員の歓迎イベントが海外旅行……そして都会の夜の街にはフェラーリやポルシェを始めとする高級外車が溢れまくっていたのである。ディスコ帰りにタクシーをひろうのに、1万円札を振りかざさないと止まってくれなかった……なんという笑い話のような逸話もあったりした。
そんな異常な好景気はまさにシャンパンの泡(バブル)のようだ。筆者は当時から自動車業界のなかにいたのだが、年に数冊もの単行本(最大2万5000部)の執筆を依頼され、そしてその文庫版まで刷られるといった、今では考えられない出版業界の景気の良さの渦の中にいたと記憶している。
大学生や若者が、女子にモテるために高級外車を涼しい顔で手に入れ、89年に発売され、世界を震撼させたトヨタの最上級乗用車、セルシオや、88年に華々しく登場してシーマ現象なる一大ブームを巻き起こした日産最上級サルーンのシーマをブイブイ乗り回す、若くして1人ウン万円のディナーに彼女と舌鼓を打つ、クリスマスの高級ホテルは1年前から予約でいっぱい、ルイ・ヴィトンが飛ぶように売れた……なんてことも、この時代を象徴するバブルな話であった。バイト、社員の給料の高さに加え、それ以上の消費が加速したのは、なによりも、誰もがバブルな雰囲気に呑まれていたからにほかならない。小市民の筆者でさえ、その時代には身の丈に合わないマセラティやメルセデスベンツを乗り回していたものだった。
バブル期のクルマの世界で象徴的だったのは、間違いなくフェラーリF40にまつわる話だろう。1987年にフェラーリ創業40周年を記念したF40は、正規ディーラー価格約4600万円だったにもかかわらず、約1300台の限定生産ということもあり、世界のオークションで2億円の値をつけて話題になった。そんなバブル期の最中にデビューした国産スーパーカー、初代ホンダNSXもそうだが、クルマを投資のために買った人も少なくない。筆者の知り合いも、新車のNSXをまったく動かさず、カーレージに保管し、ボディカバーをかぶせたまま、値段が上がるのを待った強者がいた。そしてそれをとんでもない値段で買う人もいたのである。