この記事をまとめると
■SUVブームに圧されるように国産セダンが消滅の危機に瀕している
■走行性能を重視する欧州ではいまだセダン主流だ
■セダンは不必要なものなのかを改めて考えてその魅力を探った
広さや見晴らしのよさではSUVに敵うべくもないセダン
現在はSUV全盛期といえる。軽自動車からフルサイズまで、オン/オフを問わずさまざまなSUVを各社ラインアップしている。そんな中、伝統的ともいえるセダンが消滅しそうな危機にある。日産は同社の代表的なセダンであったスカイラインのハイブリッドモデルと高級ブランドであるシーマとフーガの生産中止を決めたという。また、ホンダもレジェンドやアコード、シビックもセダンを廃止するという。セダンってそんなに不必要なものなのか。改めてセダンの魅力を探ってみたい。
確かに販売台数的にはSUVが圧倒的に多い。セダン派も少数はいるが、自動車メーカーとして効率の良い利益を追求していけば、セダンは廃止という決定も致し方ないのが現状といえるだろう。だが、SUVに乗り替えた人たちやSUVに乗り続けてきた人たちは、本当にその走りや使い勝手に満足しているだろうか。もしかしたら何らかの不満を抱いていて、やはり次に乗り換えるならセダンに戻りたいと考えている人がいるかもしれない。
SUVとひとくちにいっても、大人数が乗れるミニバン系からオフロードも走れるクロカン系、スポーツカー的なクロスオーバー系など、多彩なバリエーションが展開されているが、共通しているのは車高が高いということだ。車高が高いことで乗員の着座位置が高くなり、前席の見晴らし性がいい。また、ミニバン系の大きく広い室内は、まるで自室にいるかのように快適で広いと感じるだろう。
だが、それは止まっているか、ゆっくり走っている場面に限られることが多い。
クルマは走る乗り物。高速道路も走れば山道も走る。高速道路では前方視界が開け、渋滞などでもストレスが軽減されるが、120km/h走行区間が増えた新東名高速道路などを走ると、ちょっとした車線変更でも車体が振れて安定感を欠く。横風の強い場面では直進性も影響を受ける。ミニバン並みに広いセカンドシートに乗っていても車体が振られて落ち着いて座っていられない。
また、大きな室内空間は遮音や防振が難しく、走行ノイズやバイブレーションに搭乗者の苦情を受けることもあるだろう。そもそも着座位置が高いことは乗員の頭部位置も高い位置にある。車体のピッチングやローリングなどの挙動が起こるたびに、ピッチングやロール軸から遠い位置にある頭部には大きなモーメントがかかり、目眩を生じやすく、クルマ酔いしやすい。3列目シートになると、フロア下のタイヤが路面から受ける突き上げで身体が飛び上がってしまうこともある。ドライバーはそうした特徴を理解してジェントリーな運転を心がけねばならないだろう。