この記事をまとめると
■工業デザイナーの巨匠「ジョルジョット・ジウジアーロ」が手掛けたクルマを振り返る
■フォルクスワーゲンの初代ゴルフは最高傑作と呼び声が高い
■日本車も過去に手掛けており、21世紀に入ってからも活動を続けている
巨匠「ジウジアーロ」のベストデザインを振り返る
世紀のカーデザイナーと称される、ジョルジョット・ジウジアーロ。何しろ、手掛けたクルマは未公開のものを含めれば350車種とも400車種とも言われており、イタリア車はもちろん、ドイツ車、アメリカ車、そして日本車と活躍の範囲も広大だ。
そのなかで、今回は量産車でのベストを挙げたい。たとえば、ファンの間では1964年のアルファロメオ「カングーロ」こそが最高傑作だといった話があるが、こうしたコンセプトカーを含めてしまうと、もはやベストを挙げるなど到底不可能なのである。
で、いきなり結論だが、やはり量産車ベストはフォルクスワーゲンの初代「ゴルフ」になるだろう。
2010年にイタルデザイン・ジウジアーロ社はフォルクスワーゲングループ傘下となったが、当時、同グループのデザインを統括していた敏腕デザイナーのワルター・デ・シルヴァは、ジウジアーロが手掛けたすべてのクルマのなかで、誰もが認める傑作としてこの初代ゴルフを挙げた。これに異を唱える方はそう多くないと思う。
同車がベストとされるのにはいくつかの理由がある。まず、ジウジアーロは、この1台だけでその後に続く2ボックスカースタイルの基礎を築き上げてしまったのだ。
たとえば、直前に手掛けた「アルファスッド」(1971年)では、まだどこかに60年代特有のクラシカルな表情を残していたが、ゴルフでは直線を用いた明快なボディとキャビンの組み合わせで、まったく新しいシルエットを創出して見せた。さらに、一直線に引かれたキャラクターラインを軸に、非常にシンプルで現代的な「新しい面」も提示したのである。
実際、ゴルフの発注に当たってフォルクスワーゲンから出されたオーダーは、時代遅れになっていた「ビートル」を一新し、再びユーザーを振り向かせたいというもので、これに対し、氏は当時のスタイル・トレンドとは異なる提案を試みたと語っている。いや、言葉にするのは簡単だが、まったく異なるデザイン・アプローチを短期間に行うなど、通常では考えられない。
単に「美しいデザイン」ということではなく、それが巨大メーカーの経営を左右する、ある意味その1台で時代を動かすほどの革新的な提案を送り出す点が氏の真骨頂であり、ゴルフの魅力なのである。
ちなみに、ジウジアーロとゴルフと言えばこの初代がピックアップされるが、いまだ中古車市場で高い人気を誇る2代目の提案スケッチも氏の手によるものだ。