ゴルフかパンダかSVXかそれとも? 巨匠ジウジアーロの市販車最高傑作を考えてみた (2/2ページ)

21世紀に入っても衰えないデザインセンスはまさに職人だ

 さて、ジウジアーロが「カー・デザイナー・オブ・ザ・センチュリー」(1999年)に選ばれるほどの評価を得たのは、短い期間に印象的な数点を残したのではなく、60年代から2000年代の長きに渡って優れたデザインを提示し続けるその非凡さにある。ということで、後半ではゴルフ以外に各年代のベストも挙げてみよう。

 まず、70年代がゴルフだとすれば、80年代のベストはフィアットの初代「パンダ」(1980年)で、これもまた異論のないところだろう。じつは、先述のワルター・デ・シルヴァもこの2台を歴代ベストに挙げているのだ。

 パンダは、ゴルフで築いた2ボックススタイルを基本とし、よりビッグキャビンの新世代プロポーション、一体成形の大型バンパーによるシンプルなボディ構成などにより、80年代以降の基本デザインを更新してしまった。これを、平面ガラスに代表されるように、低コストのエントリーカーで実現してしまったところがまたスゴイ。

 当時のフィアットも、旧態然とした商品群で販売数を落とすなか、初代ゴルフでの活躍を見た経営陣が氏に相談を持ちかけた格好だ。その切実なオーダーに革新的な回答で応えたのは、まさにゴルフとまったく同じ状況なのである。

 90年代ベストはスバル「アルシオーネSVX」を挙げておきたい。デザインの美しさはもとより、それをほぼそのままカタチにしたスバルの製造技術も含めてのベストだ。販売的には苦戦したが、これがもしいすゞの2代目「ピアッツァ」として世に出たなら、もしかして状況は違っていたかもしれない?

 2000年代ベストは、アルファロメオ「ブレラ」だ。ジウジアーロらしい圧倒的なプロポーションの美しさに、シンプルな面構成の組み合わせはまったく衰えを見せない。同時期の「159」とともに、その後の同社のアイコンとなる盾型グリルを提示した点も見所だ。

 繰り返すが、カングーロからブレラまで、時代によりデザインの様式が大きく変化するなかで、常に新しく合理的で、かつ美しいクルマを生み出すのが氏の非凡さである。2015年にイタルデザインを辞した氏は、息子のファブリッツィオとともに新たにGFGスタイルを立ち上げた。最近はコンセプトカーの提案が多いが、できることならまた多くのメーカーでその才能を発揮して欲しいと思う。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

愛車
いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
趣味
オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
好きな有名人
筒井康隆 /三谷幸喜/永六輔/渡辺貞夫/矢野顕子/上原ひろみ

新着情報