【試乗】2ドアの「90」は悪路で圧巻の走破性! 「110」のディーゼルは上質さ最高! ランドローバー・ディフェンダーの魅力が驚異的だった (3/3ページ)

「90」は山岳地帯をいきいきと走れる生活密着型の扱いやすさ

 まずは日本国内に多くあるような幅の狭い林道を走る。雨でぬかるんだ路面、そして岩の突き出た路面、さらに草が生い茂り滑りやすい路面なども組み合わされた難しいコンディションだが、90はまるで普通の道を走っているかのようにまったく何事もなく走破してしまう。ステアリングにキックバックが起こらず、ドライバーはただ四方の路面状態や草木などに車体を擦らないよう注意するだけで、トラクションコントロールはすべて機械が適切に行ってくれる。インストルメントパネルの中央に設置された液晶タッチモニターからドライブモードでオフロードを選択すれば、センターデフやリヤデフのロッキングについてもオートマチックに機能させられ、ドライバーはただハンドル操作、アクセル、ブレーキだけに集中していればいい。

 こうした悪路ではクルマの周囲の状況を直接目で見ることが重要だが、実際に窓を開けて外を見ても、右ハンドル車の場合、左前方や斜め後方などタイヤ周辺の状況を直接目で見ることは難しいだろう。だが、今回のディフェンダーにはクリアサイトグランドビューと呼ばれる前方カメラを利用した3次元で見られる仮想的な表示が採用され、前輪の周囲やエンジンの下など、まるでボンネットが透明になったかのようにモニターを通じて路面状況を視認することができるようになった。また、従来からある360度のアラウンドビューモニターも大画面で表示されるので狭い山道でも安心感がある。

 車幅が2mの車体ながら、短いホイールベースの効果により最小回転半径はわずか5.3mで、こうした林道のような狭い道でもまるでコンパクトカーであるかのように小まわりが利き、切り返すことなく難コースを走破することができた。その取りまわし性の良さは、視認性に優れていることと相まって、90の悪路適応性の高さを示しているのだった。

 次に、さらに難しいコースにチャレンジする。泥がぬかるんだ泥濘路において、30cmから40cmほどの深いため池を利用して渡河性能を試すことができた。ディフェンダーは最大渡河性能が900mmと大きく確保されていて、30cm程度の水深では何事も無いように走破してしまう。

 今回のディフェンダーにはウェイドセンシングと呼ばれる水深を測る機能も装備されており、サイドミラーの中にあるセンサーで水面の反射を利用して渡河水深を計測してモニター内に表示することができる。これで水の深さを知ることが可能となり、濁った水で水底が見えないような沼地でも走りきることができる。

 その踏破性の高さは圧倒的だ。最大発進傾斜角は45度で、立つことも不可能なほどのきつい傾斜角でもディフェンダーは登っていくことができる。その屋台骨となる車体の骨格は、非常にタフなボディ剛性が与えられていて、オフロード車の一般的なラダーフレーム車の3倍ものねじり剛性が実現されている。ディフェンダーに採用されているボディは「D7Xアーキテクチャー」と呼ばれる最新のもので、さまざまな過酷な耐久試験をクリアして採用に至っているのだ。70年間の歴史を感じさせ、ディフェンダーの名をさらに高めるものとして完成させられているといえる。

 90のベーシックなモデルは551万円からという価格設定で、ホイールはスチール製のホワイトにペインティングされた、かつてのディフェンダーを彷彿とさせるものだが、これが非常によくマッチングしていた。また、さまざまなオプションパッケージプランも提案されているので、自分好みの1台に仕上げることができる。そうしたパッケージオプション群は、悪路を知り尽くしたランドローバー社だからこその実用的かつ高性能なものばかりで、選ぶことも楽しみのひとつとなっているといえるだろう。

 今回の試乗で直6ディーゼルの110と、2リッター直4ガソリンターボエンジンの90を乗り比べることができたわけだが、重厚さと高級感のある110に対して、90は非常に実用的で山岳地帯をいきいきと走れる生活密着型の扱いやすさが魅力となっていることがわかった。

 90と直6ディーゼルエンジンの登場で、ディフェンダーシリーズはさらに高い人気とユーザーからの支持を得ることになると確信することができた。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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