この記事をまとめると
■新車市場ではボディサイズの大型化が進んでいる
■海外での販売を視野に入れている結果がボディサイズの大型化だ
■市場規模が海外の方が大きいので、どうしても偏ってしまうとも言える
日本市場より海外市場を重視している影響が大きい
最近の日本車は、SUVブームということもあり、かなりサイズが大きなモデルが増えた印象がある。たとえば、2022年秋に日本仕様が発売予定のマツダ「CX-60」のボディ寸法は、全長4740mm×全幅1890mm×全高1685mm、ホイールベースが2870mmだ。
全長こそ5m越えはしていないが、全幅はほぼ1900mmとかなり大きい。先日、欧州仕様CX-60プロトタイプをマツダのテストコースで試乗したが、FRレイアウトであることに加えて最小回転半径は5.4mでCX-5より小さく、取り回しは苦にならなかった。
とはいえ、実車はかなり大きいという印象で、都内の駐車スペースなどでは頭を悩ますかもしれないとも思った。こうした日本車の大柄化の理由は、やはり日本車がグローバル化して、日本と同じモデルを海外で販売することに関係しているのだろうか?
そこで、世界各地で大きいクルマが多い市場を改めて考えてみると、筆頭はやはりアメリカであることがわかる。
アメリカ市場のなんと6割強が、ボディサイズが大きいライトトラックで占められるからだ。ライトトラックとは、ラダーフレームをベースとするピックアップトラックと、各種SUVやクロスオーバーを指す。もっともサイズが大きなセグメントは、フォード「Fシリーズ」やGMシボレー「シルバラード」などのフルサイズピックアップトラック、GMシボレー「タホ/サバーバン」やキャデラック「エスカレード」などのフルサイズSUVだ。
こうしたフルサイズが近年、より大きく立派なボディデザインになったことで、フルサイズに次ぐミッドサイズとコンパクトサイズがともに大柄化していったという経緯がある。
こうしたアメリカ市場でのSUVシフトは90年代に始まったが、その影響は欧州プレミアムブランドと日系メーカーのプレミアム系にも及んだ。
また、世界最大の自動車市場である中国では、2000年代に入って民主化政策が強まり庶民が自家用車をもつようになってから、アメリカンカルチャーに対する憧れが強く、さらにメンツを重んじる国民性のなかで、より大きく立派なクルマを求めるというトレンドもあった。
日本メーカーとしては、市場規模でみれば、中国とアメリカを重要視し、さらに日本車に対する支持が強い東南アジアやアセアンなどの需要を取り込むという流れがある。さらに、欧州、南米、南アジア、中近東など、各地の市場性を考慮しながら、商品・製品企画を行う。
規模の大きなメーカーでは、国や地域の市場特性にマッチした専用車を仕立てるが、中規模メーカーは中国とアメリカを念頭に置いたかたちでのグローバルモデルの開発が必須となる。
そうした流れのなかで、日本車のボディサイズは段階的に大きくなっていったといえるだろう。