半導体の供給がクルマの価格が上がるか下がるかの鍵となる
では、具体的に自動車に対する値上げの根拠はどこにあるのだろうか? 材料については、車体、ボディ、エンジン、トランスミッションなど使う各種の鋼板では各種原料が値上がりしている。そのほか、各種樹脂など、自動車に関わる数万点の部品それぞれで使われる材料に対して、生産国の社会情勢や物価状況によってさまざまな影響を受ける。
コロナ禍となり、さらにロシアのウクライナ侵攻に起因した国際情勢不安から、金属などの市況の動向や、輸送のトラックや船舶での燃料高騰による運輸費用の上昇に対して先が読めない状況が続いている。
また、新車価格上昇の可能性については、ここ1~2年で耳にすることが増えた半導体不足問題も根強い。半導体不足は、コロナ禍で世界市場における半導体の需要と供給が乱れたことが原因とされている。
こうした状況について、「自動車には最近、自動運転技術を活用した高度運転支援システムや電動化などが進んだことで、高性能な半導体の需要が増えていたところに、コロナ禍での巣ごもり需要によってスマートフォンやゲーム機などの需要が増え、半導体市場全体の受給バランスが崩れた」という解釈をする場合がある。
ただし、自動車で使う半導体とスマートフォン向け半導体が同じものが多いというのではなく、半導体メーカー側の製造能力の問題として、どのような半導体の生産を優先させるか、という視点が大きな問題だといわれている。
こうした見解を、自動車メーカー各社の経理担当役員らが、自社の決算報告などで報道陣向けに説明している。いわゆるサプライチェーンの問題として、中長期的な課題に対して自動車メーカー各社が独自の解決策を模索しているところだ。
半導体の需給関係が乱れれば当然、半導体の価格高騰に結びつき、今度ますます半導体の利用が増えると予測されている自動車産業界にとっては、新車価格を値上げせざるを得ない状況に追い込まれるかもしれない。いずれにしても、当面の間、日本車の新車価格に対して厳しい社会状況が続きそうだ。