環境に対する国民の意識の低さが問題だ
では、トヨタが世界初として1997年に発売を開始したプリウス以来のハイブリッド車(HV)はどうかというと、こちらは2020年の数値だが、92万台で新車販売の37%となっている。もっとも売れているのはガソリンエンジン車で138万台、新車販売の55%を占める。HVがなかったり、HVを選べる車種が限られたりするメーカーは、ディーゼルエンジン車の販売に力を注いできたが、その販売台数は14万台で、6%弱というところだ。
いずれにしても、日本は、HVも含め電動化による排出ガスや燃費の対応で、今日なお欧米と中国に比べ遅れをとっている。しかも、日本の行政は、罰則を伴う厳しい導入計画を持たないため、今後もEVの急増は望めない。
一方で、取り扱いが容易ではなく、燃料補給施設(水素ステーション)の整備も進まない水素に話題を集めようとする様子さえある。発電では、再生可能エネルギーへの依存を強めようとする動きがある。そして水を電気分解して水素を得ようとする構想もある。水素社会の実現が安倍政権時代からの方向だ。しかし、それではいつまでたっても脱二酸化炭素社会の実現は難しい。なぜなら、いずれも理にかなわず、原価が合わないからだ。
EVは、先ごろ日産自動車とホンダが全固体電池の見通しを示し、性能はもちろん、日産は原価の低減にまで触れた。EVを普及させれば、ヴィークル・トゥ・ホーム(VtoH)など、家庭や施設などへの電力供給による、電力消費の平準化につながり、高効率な電力利用が実現する。
最大の課題は、マンションなど集合住宅に普通充電設備の設置ができないことだ。しかもそれは金銭の問題ではなく、環境への国民の意識の問題である。真実を知り、意識の転換さえできれば、EVの普及と、それに付随した安心・安全な社会の構築につなげていくことができる。
EVの普及は、たとえ自分が購入しなくても、日本の未来につながるという認識が国内に浸透する必要がある。それなくして、EV販売で欧米や中国には到底追いつけないのはもとより、環境とエネルギーに不安を抱えたまま、未来への希望を描けない国になってしまうかもしれない。