【試乗】ミッドシップがもたらす圧倒的なコーナリング性能! マセラティMC20は官能性とスポーツ度を極めていた (2/2ページ)

スーパースポーツでありながら快適な乗り心地

 高級なレザーとアルカンターラを効果的に使ったキャビンのフィニッシュは、さすがはマセラティの仕事。試乗車にはさらにオプションのフルナチュラルレザーインテリアが装備されており、その高級感はさらに高まっている。

 まずはデフォルト・モードともいえるのだろう「GT」のモードを選択してドライブをスタートさせる。ミッドに搭載される3リッターのV型6気筒ツインターボエンジンが最大の特徴とするのは、MTC(マセラティ・ツイン・コンバスチョン)と呼ばれる、点火に副燃焼室を用いるシステムを採用していること。

 これは副燃焼室内で作られた火炎流を改めて主燃焼室に噴射することで、かつてはホンダのCVCCのように燃費性の向上のために使用されていた技術だが、現在ではより効率的にパワーを求めるためにF1マシンでも使用される最新世代の技術として知られている。マセラティによれば、量産車でこの副燃焼室方式を採用したのはMC20が初の試みだというから、まずはその仕上がりは何よりの楽しみといっていいだろう。参考までにこのエンジンの名は「ネットゥーノ」。英語ではネプチューンとネーミングされている。

 最高出力で630馬力、最大トルクで730Nmを発揮するネッゥーノエンジンは、さすがに低速域から魅力的なフィールをドライバーに伝えてくる。このMC20の主構造体はカーボンモノコック。ほかにもボディのカーボンパネルなど軽量化への取り組みは積極的で、車重は1475kgしかない。このウエイトが8速DCTとの組み合わせで、どこまで魅力的な加速を演出するのかを試してみたくなるのは、まずは当然の欲求といってよいだろう。

 マセラティによるオフィシャルデータによれば、0-100km/h加速は2.88秒。その強烈な加速は最高速の326km/h以上にまで達するというが、確かにその数字が期待できる力強さを感じさせる加速だった。注目のサウンドは4000rpm付近を境に音質が明確に変わり、さらにレブリミット付近では、もう一段乾いた官能的な響きになる。

 好印象を抱いたのは、その乗り心地の素晴らしさだ。ステアリングの重さや正確性も適切だから、スーパースポーツとして生を受けたとはいえ、GTのようなコンフォートなクルージングを楽しむこともできる。サスペンションは前後とも5リンク式で、ドライブモードとは別に、このサスペンションのみをソフト(GT相当)にセッティングすれば、長距離ドライブも一切苦にはならないはずだ。

 コーナリングはさすがにコンパクトなV型6気筒エンジンをミッドシップするモデルだけのことはある。前で触れたステアリングの正確さ、そしてコルセ・モードを選択して初めて分かった、4輪にそもそも与えられていたメカニカルグリップの素晴らしさ。このMC20で限界を超えるのは簡単なことではないのだ。それだけに絶対的な安心感をもって、どのようなコーナーへもMC20のノーズを向けていくことができる。

 フロア下にバッテリーを搭載することになるBEV仕様のMC20は、さらに重心位置が低下し、コーナリングでは理想的な動きを見せるようになるだろう。

 ミドルサイズSUVのグレカーレを発表し、次なるニューモデルとしてGTを、そしてそのいずれにもBEVを設定するというマセラティ。彼らのきわめて挑戦的なプランのスタートを飾るのに、このMC20はまさに最高の存在といえそうだ。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
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