F1由来の最新技術がP1の走りを刺激的にした
筆者は、このマクラーレンP1を中国の珠海国際サーキットでドライブしたことがある。ハンマーヘッドスタイルのフロントノーズや、いかにも優秀なエアロダイナミクスを想像させるボディデザインは、やはりサーキットによく似合う。聞くところによれば、そのデザインには2008年のF1GPを制覇したMP4/23などからインスピレーションを得たディテールもあるというのだから、サーキットでそう感じるのも自然なことなのだろう。
コクピットはマクラーレンの常で、機能性を重視したシンプルなもの。ただし、このP1のステアリングには重要なスイッチが左右に分かれてふたつ備えられている。
それはF1由来の技術であるDRS(ドラッグ・リダクション・システム)と、エレクトリックモーターの動力をフルに発揮させるIPAS(インスタント・パワー・アシスト・システム)の各々がそれだ。
前後のサスペンションは油圧で車高とスプリングレートを変化させるレース・アクティブ・シャシー・コントロール。これはMP4/12Cで採用されたプロアクティブ・シャシー・コントロールをさらに進化させたものだ。ブレーキはフロントに390mm径、リヤに380mm径のベンチレーテッドディスクを、またタイヤサイズは各々245/35ZR19、315/30ZR20と前後異径の設定だ。
そのP1の走りは、刺激的というほかはないものだった。車重は1395kgと発表されていたが、その数字を感じさせる余裕もなく、P1は驚くべき加速度で車速を高めていく。もっとも印象的だったのは、IPASを使用した時の確実なパワーの上乗せが感じられたことと、ストレートで体験したDRSの感覚。それまで感じていたダウンフォースが小さくなり、さらに加速に向けての体勢がふわりと整えられる様は、今でも鮮烈な記憶としてアタマのなかに残っている。
その後マクラーレンからは、さまざまなアルティメットシリーズが誕生したが、このP1を超える刺激を持つモデルは存在しない。その価値は、これからもさらに高まっていくことは間違いないだろう。