一周回って新鮮に映ることもある
そして今、軽自動車の商品企画担当者は、「比較的若いお客様にクルマを売るには、スライドドアの装着は必須条件」と語る。20年前にトランクスペースを装着しない自動車を描いた子供は、今では立派な大人に成長して、子育て世代に入っているわけだ。
いわば「ミニバン世代」だから、トランクスペースを持たず、天井は高く、スライドドアを備えたクルマを求める。そのために、カローラシリーズやヤリスシリーズの登録台数をボディタイプ別に(たとえばヤリスとヤリスクロスを別々に)算出すると、国内販売の総合1位はN-BOXで、小型/普通車の1位はルーミーになるのだ。両方ともトランクスペースを持たず、天井は高く、スライドドアを備える。「セダンがクルマの基本形」と思っていた世代とは、デザインに対する受け止め方が大幅に変わった。
ところがその一方で、シビックは若年層の支持が厚く、国内販売では20代が24%を占めるという。シビックはセダンではなく5ドアハッチバックだが、N-BOXやルーミーのようなスペース重視の車種ではない。商品の特徴や世界観はセダンに近い。
また比較的若い人達が、レクサスのようなプレミアムブランドに興味を示しているという調査結果もある。トランクスペースを備えたセダンボディか否かはともかく、カッコ良さや速さを感じさせる趣味性の強いクルマが、若年層に再び注目されている傾向もあるわけだ。
以上のように、クルマに対する好みや関心は世代別によって異なるようで、曖昧な面もある。世代別に見ても、多様性が伴う。そこがクルマは嗜好品といわれる所以でもあるのだろう。